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4日目

「う・・・んー?」
翌朝、朝日の眩しさをじかに受けて目を覚ました。
「あー、そうだったな。昨日はここで寝たんだった」
頭が回転しだすに連れて、だんだんと昨夜の事を思い出された。と、膝元で美欧も起きたようでもぞもぞと動き出したのを感じた。
「ん~・・・、みゃ~」
そんな声を出して美欧は猫のように伸びをするのだった。
「おはよ、美欧」
「えっ、えっ、あれ?なんで天都の膝の上にいるんだろ」
美欧に声をかけるとどうやら美欧も起き上がりで昨夜の事を忘れてるせいか、ばっと起き上がって驚いた顔を見せた。
「昨日はいっぱい遊んだから疲れてたんじゃない?」
「あ・・・私、あのまま寝ちゃったんだ」
そう言うと美欧もようやく昨夜の事を思い出したようだった。
「そうみたいね」
「にゃ、ごめんね、天都。迷惑じゃなかった?」
「ううん、迷惑なんて思ってないよ。それより女将さん達が来る前に着替えとこうよ」
済まなそうに言う美欧にそう言ってみせた。美欧なら迷惑だなんて思ったことはない。
「うんっ」
そう提案すると美欧はコクリと頷いた

「ねっ、女将さん。女将さん達って夫婦だよね」
朝食の配膳をする雪乃子姫に美欧は唐突に尋ねた。そんな事を急に聞いたりしてどうしたんだろ?
「ええ、正式ではないですけどそうですよ」
そんな唐突な質問にも雪乃子姫は微笑みながらそう答えた。って、正式じゃないってどういうことだろう?
「にゃ?正式じゃないって?」
「前にもお話したようにアデンは反王が支配してますのできちんと聖堂じゃなくて別の安全な所でしたんです。ですから、まだ公式には結婚してるとはいえないんです」
「そうだったんだ~」
確かに追われている身でそんな危険な所でできるはずもないような。きっと雪乃子姫も聖堂でしたかったのだろうな。
「もしかして、美欧ちゃん行ってみたいのですか?」
「うん、そうだったけど危ないならやめようかなあ・・・」
聞いてくる雪乃子姫に美欧は少し残念そうに答えた。
「美欧ちゃん達ならきっと大丈夫だと思いますよ。今はレジスタンスの対応にお城に警備を重要視していますので、それ以外はほぼいないと思います」
「それじゃあ、行ってみようかな」
「アデンでも一際大きな建物ですので一目見れば分かりますよ」
気を取り直した美欧に雪乃子姫は微笑んだ。
「へ~、そうなんだ~」
「たまに巡回の警備隊がいるらしいので気をつけてくださいね」
「うん、分かった」
美欧はコクリと頷き返した。
「それでは、失礼しますね」
配膳をし終えた雪乃子姫はそう言って一礼すると部屋を後にした。
「ねっ、ごはん食べ終わったら行こ?」
雪乃子姫が部屋を出ると、早速とばかりに美欧はおねだりしてきた。
「うん、行ってみようっか」
「やった~」
せっかくなので美欧の話に乗ると嬉しそうに喜んだ。せっかく美欧と二人だけのお泊りデートに来てるんだし、行ってみるのもいいかな。それにこういう機会でもないと教会とかに足を運ぶ事なんてないしな。
その後、朝食を済ませるとそのままアデンへと足を向けた。アデンにはテレポーターを使って簡単に付く事が出来た。
「わ~、ここも大きい町なんだね~」
「だな」
周囲を見渡す限り建物が点在していた。さすが首都と言ったところだろうか。
「でも~・・・、誰もいないね」
「うん」
美欧の言うとおり、誰一人として街中を闊歩している人は見当たらなかった。ここまでシーンと静まり返っていると、どこか不気味だ。
「にしても、女将さんの言ってた聖堂はどこだろ」
「私も分からない」
どこを見ても似たよった建物ばかりで、一体どれがその聖堂なのかさっぱり分からない。ここは虱潰しに探すしか方法はないのかなぁ。そう考えていると、美欧がくいくいと腕の裾を引っ張った。
「ん、どうしたの?美欧」
「屋根の上に昇って探すのはどうかな。一際大きいって言ってたし」
上を指差してそう言ってきた。
「あー、そだな。うん、いいかも。その方法で探すとするか」
見た感じだとここらへんは平屋が多いから上から探した方が良さそうだ。
近くの民家の屋根に上って周囲を見渡していると
「ね、アレじゃないかなあ」
そう言って美欧が指差した先には周囲よりは一際大きな赤い屋根の教会のような建物が見えた。
「あれかもしれないね」
「見つかったことだし、行こっ?行ってみよ~よ」
美欧はこちらの腕を揺すりながらそう急かしてきた。よっぽど行きたいのだろう。
「じゃ、行こっか」
「うんっ」
苦笑しつつ答えると、美欧は「待て」を解かれた仔犬のように勢いよく屋根の上を飛び跳ねて行った。

更新日:2012-09-26 18:53:48

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