- 3 / 93 ページ
1日目
「ごめ~ん、天都。洋服選びに迷っちゃって」
旅行用カバンを持った美欧はそう言って二階から慌てたように降りてきた。もちろん、行く先が雪国って事もあってダウンジャケットも用意している。
「大丈夫、大丈夫。時間はたくさんあるし」
何時までに来てくださいと書いているわけでもないし、今日中につけばいい事だ。
「ふう、それなら良かった~」
「ところでさ、クジ引いた時に何か言われなかった?」
「あ、そういえばいく前に宿泊券の裏側を読んでねって言われた」
やはり思っていた通りか。あいつの事だからなにか仕掛けをつけているんではないかと思えば、やはり曰くありげな事を言っていたか。
「えっと・・・・『この紙を持ったまま「跳べ」と強く念じてください』だって。こうするの・・・」
その次の瞬間には美欧の姿はそこにはいなかった。あたりを見渡してみるもやはり姿はない。
「な、ちょ。美欧!?」
どうやら紙の書かれていた通りにしたらしい。と、こんな暢気な事を思ってる場合じゃないな。美欧の後を追いかけないと、あの方法のテレポートだと精度があまり良くないので着地点がばらばらになるケースで多い。そう思いつつ急いで美欧の後を追った。
「ふえ~ん、寂しかったよ~」
そのオーレンに着くなり、半泣きの美欧が飛びついてきた。どうやら偶然にも美欧と同じポイントに着地できた。
思ってもみなかったテレポートでいきなり見ず知らずの所へと飛ばされたんだ。寂しがり屋の美欧には酷って物だったかもな。
「もう大丈夫だよ、美欧」
美欧の頭を撫でて宥めた。やり方は子供っぽいかもしれないが、いつもこうすると美欧は泣きやんでくれる。
「して、泊まる旅館はどこだろう?」
まわりを見てみると似たような建物があり、どれが旅館なのか見当がつかない。オーレンといえば、それなり大きい町だから一軒一軒歩いて回るのは骨だ。
「旅館なら、券の裏柄に地図が載ってるよ」
すっかり泣きやんだ美欧は宿泊券の裏面を示した。美欧の言うとおり、宿泊券の裏側を見てみるとちゃんとオーレン全体の地図と旅館の場所が書かれてあった。多分、元々はこれだけだったけど、後からラヌタがテレポート効果を付加したのだろう。
「ここからは・・・わりと近くだな」
「ねえ、ここっていろんな人たちがいるんだね」
きょろきょろと辺りを見渡していた美欧はそう言ってきた。
「まあ、この世界にはこれが当たり前なんだよ」
「へえ~、そうなんだ。私達の所とは違うね~」
確かにオーレンは人の行きかいが多い町だけあり、ダークエルフやエルフなどさまざま人種が行きかっている。この街ではそれがいつもの光景だが、美欧にとっては新鮮だったのかもしれない。
「う~・・・ここって寒いにゃ~。早く、旅館にいこ」
一旦離れていた美欧はまた腕にぎゅっとしがみ付いてきた。かなり寒がっているらしく、防寒装備でも体を震わしていた。そういえば猫って寒い所は嫌いだったよな。なにせ、『ね~こはこたつで丸くなる~♪』って童謡にあるくらいだし。オーレンは元々から特異的な気候だからな。火山が近くにあるというのに雪国になった原因はあのアイスクイーンとかのせいだと言う。まったく、はた迷惑な話だな。
「そだな、旅館に行って温まろうか」
地図どおりに歩いて行くと、目の前に一軒の木造の旅館が現れた。旅館にしてはすこし小さめであるが、周りと比べるとはっきりと旅館である事が分かる。それに風格からして立派な料亭を思わせるような年期と佇まいを感じられた。柱の木の質感といい、造りといい、風情がそれらから窺い知れた。
「うわあ、すごいねえ。私達、ここに泊まるの?」
「ああ、すごいな、ここ」
寒さなど忘れて二人はしばらくその風格に見入っていた。今日からここに泊まるのかと思うとなんとも信じられないような気持ちだ。
旅行用カバンを持った美欧はそう言って二階から慌てたように降りてきた。もちろん、行く先が雪国って事もあってダウンジャケットも用意している。
「大丈夫、大丈夫。時間はたくさんあるし」
何時までに来てくださいと書いているわけでもないし、今日中につけばいい事だ。
「ふう、それなら良かった~」
「ところでさ、クジ引いた時に何か言われなかった?」
「あ、そういえばいく前に宿泊券の裏側を読んでねって言われた」
やはり思っていた通りか。あいつの事だからなにか仕掛けをつけているんではないかと思えば、やはり曰くありげな事を言っていたか。
「えっと・・・・『この紙を持ったまま「跳べ」と強く念じてください』だって。こうするの・・・」
その次の瞬間には美欧の姿はそこにはいなかった。あたりを見渡してみるもやはり姿はない。
「な、ちょ。美欧!?」
どうやら紙の書かれていた通りにしたらしい。と、こんな暢気な事を思ってる場合じゃないな。美欧の後を追いかけないと、あの方法のテレポートだと精度があまり良くないので着地点がばらばらになるケースで多い。そう思いつつ急いで美欧の後を追った。
「ふえ~ん、寂しかったよ~」
そのオーレンに着くなり、半泣きの美欧が飛びついてきた。どうやら偶然にも美欧と同じポイントに着地できた。
思ってもみなかったテレポートでいきなり見ず知らずの所へと飛ばされたんだ。寂しがり屋の美欧には酷って物だったかもな。
「もう大丈夫だよ、美欧」
美欧の頭を撫でて宥めた。やり方は子供っぽいかもしれないが、いつもこうすると美欧は泣きやんでくれる。
「して、泊まる旅館はどこだろう?」
まわりを見てみると似たような建物があり、どれが旅館なのか見当がつかない。オーレンといえば、それなり大きい町だから一軒一軒歩いて回るのは骨だ。
「旅館なら、券の裏柄に地図が載ってるよ」
すっかり泣きやんだ美欧は宿泊券の裏面を示した。美欧の言うとおり、宿泊券の裏側を見てみるとちゃんとオーレン全体の地図と旅館の場所が書かれてあった。多分、元々はこれだけだったけど、後からラヌタがテレポート効果を付加したのだろう。
「ここからは・・・わりと近くだな」
「ねえ、ここっていろんな人たちがいるんだね」
きょろきょろと辺りを見渡していた美欧はそう言ってきた。
「まあ、この世界にはこれが当たり前なんだよ」
「へえ~、そうなんだ。私達の所とは違うね~」
確かにオーレンは人の行きかいが多い町だけあり、ダークエルフやエルフなどさまざま人種が行きかっている。この街ではそれがいつもの光景だが、美欧にとっては新鮮だったのかもしれない。
「う~・・・ここって寒いにゃ~。早く、旅館にいこ」
一旦離れていた美欧はまた腕にぎゅっとしがみ付いてきた。かなり寒がっているらしく、防寒装備でも体を震わしていた。そういえば猫って寒い所は嫌いだったよな。なにせ、『ね~こはこたつで丸くなる~♪』って童謡にあるくらいだし。オーレンは元々から特異的な気候だからな。火山が近くにあるというのに雪国になった原因はあのアイスクイーンとかのせいだと言う。まったく、はた迷惑な話だな。
「そだな、旅館に行って温まろうか」
地図どおりに歩いて行くと、目の前に一軒の木造の旅館が現れた。旅館にしてはすこし小さめであるが、周りと比べるとはっきりと旅館である事が分かる。それに風格からして立派な料亭を思わせるような年期と佇まいを感じられた。柱の木の質感といい、造りといい、風情がそれらから窺い知れた。
「うわあ、すごいねえ。私達、ここに泊まるの?」
「ああ、すごいな、ここ」
寒さなど忘れて二人はしばらくその風格に見入っていた。今日からここに泊まるのかと思うとなんとも信じられないような気持ちだ。
更新日:2012-09-15 14:40:46