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「大丈夫。こいつら、魔力で動いてるだけだから」
恐らくはさっきの鎧もゴーレムと同じ類のものだろうな。
「な、な~んだ。お化けじゃないのか。良かった~」
美欧に説明するとほっとしたのかぺたんとその場でしゃがみこんでしまった。ま、何も知らずにあれだけ見たらビックリするよな。
「それじゃ、上にいこっか。まだ上ありそうだし」
美欧の手を取って立ち上がらせてそう言った。
「うんっ、気を取り直してレッツゴー!」
そう言うと元気よく「おー」と片手を突き上げた。いつもの美欧らしくなったみたい。
次の階へはワープポイントから行くらしく、フロアの端に魔法陣がぽつんとあった。そこから上へと上がってみると先ほどのモンスターが周囲に嫌というほどにいた。
「わ~、なんか一杯だね・・・。こんなの相手にしてたらきりがないよ」
「だな、急いでここは切り抜けるか」
「うんっ」
「『オール・エンゲージ』」
天都がそう言ってパチンと指を鳴らすと、その衣服全体に黒い紋様のような刺繍が浮き上がり、両手の甲にはアクアブルーの水晶のような物が浮き出た。それと共に取り巻いていた魔力も格段に上がった。
「オール・エンゲージ」は通常モードから戦闘モードへと移行するための術式。
いつも戦闘時みたいな力を出していると変に警戒されたり、恐れさせたりする。なので、それを防ぐために術式で普段は抑えている。もっともこれだけをするわけにこのモードになったわけではないのだが。
「美欧、いつものあれするよ」
「うん、いいよ」
「『フル・シンクロ』」
美欧のOKサインを見てそう唱えた。今度は美欧の方に変化が現れた。和服を模して様な真っ白なワンピースに水色のミニスカ、首元には鈴に付いたチョーカー。さながらそれは現代版の天女って感じであった。
「うん、これやっぱりすごいにゃ。全然寒くない。こんなに肌出てるのに」
外見はそこらにある服に見えるだろうが、そこらにある鎧などとは比べ物にならないほど頑丈な物だ。無論、防寒効果もあるがその上に耐火や基礎力の向上などいった様々な効果が付いている。元々、『フル・シンクロ』は術者と力の波長を同調する事によってその力の一部やその能力を与えるもの。
それだけを聞くと便利に見えるが、これには発動させるために条件が付いてくる。それは術者と完全に波長が一致する人でなければ使えないって事だ。なので、ある程度の波長の幅を持つ神族でも使用できる物はあまりおらず、また使えると言っても使う相手が皆無だというケースもある。
「それで大丈夫か?」
「うんっ、大丈夫。よ~し、突撃にゃ~」
そう言うと美欧は勢いよく邪魔するモンスターをなぎ倒しながら走っていった。やれやれ、いつもながら元気一杯なもんだ。そうため息を付きながら美欧の後を追った。
「ふみゃあ~」
先に向かった6階へ行くワープポイントから美欧がこちらに走ってきて泣きついてきた。何があったのかよく分からないけど。上で何かあったのかもしれない。
「どうしてたの?美欧」
「お・・・・お、お化け・・・・」
「へ?」
「上にお化けがいたにゃ・・・・」
宥めながら聞くと震えながらワープポイントの方を指差して美欧はそう言ってきた。お化けか・・・・さっきの鎧とは違うようだけど、何だろうか。きっと上で鉢合わせしたのだろう。だとするとまだ近くにいるかも。
「それじゃ、今度は一緒に上がってみよ?」
そう言うと美欧はコクコクと頷いた。ここに一人置いていくのは可哀想だしな。
上に上がってみると赤い色や緑色のゴーストが周囲に浮遊していた。ただ、先ほどの鎧とかと違って向こうからは襲ってくる気配は無い。美欧の言っていたお化けってきっとこれの事だろう。
「大丈夫みたいだよ。あっちからは襲ってこないみたい」
まだひしっとしがみつく美欧を左手で優しく撫で
「あいつらは・・・ね」
右手に『風龍』を握ってこちらの死角から伸びてきた影のような物を一刀両断にした。すると音もなくそれは消えていった。
「うにゃ!?何それ」
「うーん、さあ?・・・・っと、そういう事か」
先ほどまで浮遊するだけであったゴーストが一変してこちら向かってきた。
「ひにゃ~。お化け来た。こわいにゃ~」
美欧はそれに敏感に反応して顔を上着に中に突っ込んできた。
ふうっとため息を吐くと、こちらに向かってくるゴーストの一団に拳銃の形のように人差し指と中指を突きつけた。
と、その先に光が収縮し、それは莫大な光線となって一団へと放たれ、ゴーストらは消滅させられた。
今のは魔力を相手にぶつける魔力砲の一種で「神砲」と呼ばれる物だ。魔力砲との違い、魔力ではなく、神気を放つ技である。神気は神族が持つ気で他の妖気や魔力とくらべ段違いの力がある。ただ、そのために神気は非常に稀な物で持っている者はほぼ神族だと言えるだろう。

更新日:2012-09-22 19:14:34

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