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「そういえば、旅館の場所はどこなんだ」
行き先は雪乃って所だけど、雪乃って旅館は近くでは聞いたことないしなあ。どこか県外の旅館なのか?名前からして雪国っぽいところにありそうだが。
そう思って美欧から一枚貰って裏側を眺めてみたら・・・・これってもしかしても・・・。でも、これが本当だとすると遠いって物じゃないぞ、これ。
そこに記されていた場所はオーレンと書かれていた。オーレンといえば別空間にある町だ。それにしてもこんな事が出来るのって・・・あ。
ふと、とある人物が頭の中に出てきた。というよりも一人しか浮かんでこなかった。なるほど、それなら期日も書いてないわけだわ。恐らくこうなる事を前もって見越しているだろうからな。
「なあ、美欧。クジってどんな人がやってた?」
「えっとねー、白いローブを着たね。天都みたいに白い髪の男の人だよ」
念のために尋ねてみると思っていた通りの答えが返ってきた。
なるほど・・・やっぱり、あいつか。
以前に知人の魔道師ラヌタに「たまには彼女とどこかに行きたいよな」と愚痴をこぼした事があった。あいつの事だからこういう事をするのは好きそうだしな。
そうなるとこの券もただの券じゃないな、多分テレポート機能でも付いているんじゃなかろうか。
「ほ~ら、天都。今から行く準備しよ~よ、こんなチャンス滅多にないんだから」
券に片手に思案しているとくいくいと美欧が袖を引っ張った。どうも考え込むと周りが見えなくなる悪い癖がある。
「あ・・・ああ。うん、そだね」
「それじゃ、二階にゴ~ゴ~」
上機嫌の美欧に連れられて二階へと上がっていった。今日は一日中美欧に振り回されそうな予感がする。

一方、その雪乃旅館では。
「おーい、雪乃。今日のお客さんは何人です?」
板場で仕込みをしていたらっこっこは鍋から視線を上げた。それは雪乃旅館の名物料理の一つなのだ。
「今日のお客さんは・・・・・二人ですね。そういえば、私の知り合いから「貸切にしてくれ」と頼まれてました」
それに雪乃子姫はノートを見ながらそう答えた。そこには当日の欄には神崎天都と女性一人(貸切要望)と書かれていた。
「そうですか。雪乃の知り合いの紹介ですか。どんな方が来るのでしょ、楽しみですね」
「私は部屋の仕度に行って来ます。グレープさんもちょっと手伝ってくれませんか?」
「はーい」
女将の雪乃子姫は仲居のグレープを連れて、『月兎』の間を歩いて行った。
「ねえ、女将さん。今日のお客様は誰です?」
「私もよくは聞いてませんけど、男の方と女の方の二名だそうですよ」
「そうですか、女将の知り合いの紹介となると気合をいれてお出迎えしなければですね」
「いつものとおりで大丈夫ですよ」
その意気込む様子にくすりと笑って雪乃子姫はグレープと共に部屋へと入って行った。

更新日:2012-09-15 14:48:04

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