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引越ししてきた暗殺者

 なんじゃこりゃ、としか良い様がなかった。

 ボクはわけわかんないモノに挟まれているからだ。

 すぐ隣には、殺し屋もどき。斜め後ろの席には猫耳をつけているコスプレ男。

 これは何なんだ。

 まあ、挨拶はしたほうがいいかと、ボクは目つきの悪い隣の席の生徒に話しかけた。

「あ、霰……さん。久しぶり」
「は? アンタ誰?」

 やっぱり、と呟きたくなるのを堪えてボクはなんとか偽笑いで微笑みかけた。


「ほら、小学三年生のとき一緒のクラスだったでしょ?」

 ソイツは顎に手を当てて、うーんとしばらくうなった。そして、ぱっと目を開けて、ああーと声をあげた。

「龍崎 花!」


 誰だよそれ。ボクの名前にも苗字にも、今コイツが言った文字は含まれていない。クラスにさえいなかった。第一、女の名前じゃねーかよ。やっぱりボクみたいなヤツなんて覚えちゃいないよね。

「黒河 黒雄だよ」
「んー、そーいえばそーだったな」

 まあ、覚えていなくても当然だ。あの時、ボクは全くコイツと会話したことがなかったし、あのまま一緒のクラスのままであっても、会話する機会はまったくなかっただろう。

 住む世界が違う、というヤツだ。

 まず、なぜボクがこいつ、影沢 霰のことについて詳しく覚えていたかを説明しよう。

 霰についてよく覚えているのは、カッコよく常に女子に囲まれていたところだ。だけど実際本人は素っ気無く無愛想で、バレンタインデーの日なんか十個以上のチョコレートを貰っていたのに、あっさり女子の前で『チョコレートは大嫌い』とゴミ箱に葬るほどだ。

 その事件があり、男子には超嫌われたが、なぜか女子の中で『素っ気無いとこが素敵ー!』とかで、さらに人気になり始めた。ありえない、としか良い様がない。

 茶髪でちょんちょんした髪の毛で、いっつも光のない目で教室の隅っこに座ってたのを覚えている。どんなに女子に囲まれていても、その瞳が輝くことはなかった気がする。

 授業中は、いつも熟睡していたのに、なぜだかテストは百点満点。足の速さも学校一で、勉強もスポーツも見た目も敵う人は一人もいなかった。当時、顔つきが地味で、スポーツも勉強も平均だったボクは霰の目になんか映ってなかったと思う。そんなわけで、面識はゼロ。

更新日:2012-09-14 04:08:15

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