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小説

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いままで感じたことのなかった、大きな達成感で満たされた心に
少しずつ広がる染みのような、濁った色の気分。
奥底から語りかけてくる声のようなものは、僕の苛立たせます。
あれだけの成果を上げても僕は満足していないのでしょうか?
この不思議な、そして不愉快な気分はなんでしょう?
この気分・・これは・・・これは・・・・?

このザワザワする嫌な気分、
それに合う言葉を頭の中で突き合わせてみました。
そして暫くの後に、いちばん近いと思われる表現がみつかりました。
それは「嫉妬」という感情のようです。
・・・僕の心の中はそのような状態をしているようです。
だけど、なぜでしょうか?
一体何に嫉妬しているのでしょうか。



僕は再びた只ひたすらに他の製作者の曲を聞き漁りました。
自分も有名Pの一人になれたとはいえ、
僕よりも知名度や曲の出来が上の人達は確かに存在します。
だからこの気分は、そういった人達へ向けたものに違いありません。
だけどとにかく、片っ端から、有名どころの製作者だけでなく中堅Pも、
そしてアングラで人気の製作者の曲だって、
更には「期待の新人」タグがついた、初めて投稿する人の曲に至るまで。

どの曲も、確かに素晴らしい作品でした。
高いクオリティを持った、人気がでるに不思議ではない作品ばかりです。
でも、僕の作品と比べてもそう大きく差があるようには思えません。
技術的や感性的な問題だけではなさそうです。
それらが自分よりもはるかに優れた人達に対する嫉妬ならば分かりやすいのに。

一体この嫉妬はなんなのだろうか・・・。

霧に包まれたようなどうにもスッキリしない気分の中、
毎日毎日、色々な製作者の曲を聞き続けました。
あの、最初のヒット曲を生み出すために行った、
「修行僧」のような日々を思い出します。
ただ一点の違いは、あまり前向きな感情が湧いてこないという事でしょうか。
しかしその「修行」は無駄にはなりませんでした。
ある不思議な事に気がついたのです。
それは、抱く嫉妬の強さが、
対象となる製作者の知名度に比例しているわけではない、
ということです。
超有名製作者よりも、期待の新人に対する嫉妬・・・
いや、もう怒りと言った方がいいのかもしれません、
そういった感情を強く抱く事がわかったのです。

何故でしょうか。自分でも驚いています。

「驚いた?当然でしょう」
「これ以上増えたら困るでしょう」
「兄弟が増えるのは不愉快に決まってます」
「でもね、仲良くやればいいじゃないですか」
「そう、仲良くね」

仲良く?
冗談じゃありません。
僕はそんなに下衆ではありません。

嫉妬を超えた、怒りに近い感情。いったいコレはどういうことでしょうか。
僕は確かに事を成しました。みんなが僕のことを有名Pとして扱ってくれる。
恥ずかしい言い方だけど、ちやほやしてくれます。
これは曲を、動画を投稿するものならば誰もが憧れる、
絵に描いたような成功劇です。
これ以上なにが欲しいのでしょうか?
これ以上なにが出来るのでしょうか?
超有名Pへの嫉妬は僅かながらですが、しかし確かにあると思います。
でも、新しく投稿を始めた新人さんへ抱くこの感情はどういうことでしょうか。
自分の立場を危うくする、新しい脅威だと 感じているのでしょうか。

更新日:2012-11-01 20:55:28