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 当麻は少女を窺う。

「じゃぁ、お兄チャンが着いてってやろうか?」
「おじチャンが?」
「…お兄チャンね。そこンとこヨロシク」
「アハハ!」

 年甲斐も無く、当麻がムキになるから、少女はパッと笑みを浮かべる。
まるで花が咲く様な喜色。
コレには当麻も つられて笑う。

「ハハハハ!可愛いなぁ、オイ♪」

(こうゆう時、思う。ガキ、欲しいな。って。でも、相手がイナイ。
一夜子しか好きになれない俺が、一体 誰とガキこさえられるってンだ)

 未だ、当麻が女に事欠く事は無い。然し、交際から先に進めずにいる。
誰に触れても、一夜子には敵わない。
当麻は あの晩に囚われた儘、気持ちが経過せずに時を過ごしている。

 少女はポケットの中から紙切れを取り出すと、当麻に差し出す。
紙面に目を落とせば、地図。この少女が書いたのだろう。
余りにもアバウト。

「ココは…花屋って、あそこかな?よし、行ってみっか。
足、痛いだろ?抱っこしてやる」
「うん!」

 少女は頬を赤らめ、当麻に抱きつく。
老若を問わ異性には好かれるのが、当麻の特技。
 然し、ソレにしても随分と人懐こい子だ。
1人で歩かせるのは やはり危険と認定。

 当麻は雑な地図を頼りに歩き出す。
抱きかかえられた少女は、普段より ずっと高い視界に目を輝かせている。
怖がられていないのなら、一安心。当麻は問う。

「何処から来たの?」
「う~んっと…アッチ」
「…ほぉ、アバウトだぁ…」
「いっぱい歩いて来たよ」
「そっか。お父サンと お母サンに怒られるだろぉなぁ」
「ううん。怒られないよ。怒るのは園長センセ」
「保育園?」
「ううん。おうち。ひだまり園」

 当麻は怪訝する

(ひだまり園って、身寄りの無い子を引き取る施設ぢゃ無かったか?
そこの子ってコトは、この子も…)

 親がいない、もしくは親元を離れている事になる。

 少女は誰を真似るのか、大人びた口調で言う。

「園長センセ、忙しくて、ナカナカ連れてってくれないンだもの。
アタシ、お母サンが待ってるって、何度も言ったのに。
お母サン、寂しがりやだから、心配なのよね」
「ハハハハ!そっか、そっか。そりゃ、園長先生が悪かったなぁ」

 “生意気な”とも思うも、少女の作り込んだ口調が可笑しい。

(ワケあって、一緒に暮らせないのかも知れないな。
そぅいやぁ、花屋の先には小っさい墓地があったっけか?
まさか、なぁ…)

 当麻は地図を確認しながら、少女の横顔を見やる。

「なぁ、ココでイイのか?ホントに」
「うん!」
「お墓…とか?」
「うん!」
「…お母サンの?」
「うん!」
「お父サンは?」
「ううん」
「いないのか?」
「うん」

更新日:2012-11-20 12:18:06

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