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大事な人の死

「いや~~~~~~~~~~」
その声は・・悲しく病院中に響いた・・・


苦しい表情もなく・・しっとりと安らぐように目を閉じるひとりの女性の傍を、いつまでも離れようとしない女がいた・・・

悲しく俯き・・涙する・・

その頬を通じた涙が・・少しだけ乾く気配が感じられる頃・・・
まるで眠ってるかのように、ベットに静かに横たわってる雪希の顔が光に照らされる・・

もう朝日が、いつもと同じように窓際を照らし・・
いつものように柔らかな陽射しが射し込んでいた・・・

何も変わらない
いつもの一日の始まりなのに
夕子のこころは、絶望にも似たさびしさを感じていた。

大事な人の姿は、もう動かない
肌の温もりが、まだ感じられるのに・・・。

・・・どうして動かないの?
どうして話してくれないの

寂しい・・・

どうしようもなく・・さびしい

夕子は、無表情のまま外を眺めた・・

雪希の姉が、心配そうに覗き込み声を掛けた。

「大丈夫?  ちょっと、ローカに出ようか?」

呆然と一点を見つめたようなその表情には、悲しみのどん底に陥れられたような絶望感にも似た陰りが見える。
支えられるように肩を抱き寄せられ・・その場から待合室の方へ移動する。
その足取りは、崩れそうになるのを一歩一歩片足を前に出してはいるが、その姿に力が無い・・・

薄化粧が看護師の手で執り行われ・・病室に入ってもいいという知らせがきた。。
生きていた頃の明るさを取り戻すように薄桃色の口紅が色鮮やかに、美しい顔立ちの雪希の表情を生き活きと魅せている。。

まるで眠っているよう・・・


更新日:2012-08-19 10:53:02

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