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「……」
静寂に満ちた部屋に、一人の男が目を閉じ、椅子に座っていた。椅子にはこれでもかというほど彫刻が施され、椅子に使われている革もかなり高級そうだ。
いや、椅子だけではない。その部屋にある全ての物がその様な゛見ただけで直ぐに分かるような高級品゛だった。
その赤髪の男はその高級品に囲まれていても不自然には思えないほどそこに溶け込んでいる。赤髪を前髪も伸ばし、真ん中で二つに分け、肩より少し長く切りそろえてある男の歳は20代前半だろうか。若いのは確かで、青年と呼ぶべきかもしれないが…
青年という言葉には釣り合わない程の重圧、気高さを纏い、圧倒的な力の差を感じさせられる。
椅子に座っている男の右側には部屋の南側の全てガラス張りの壁がある。
ガラスを通して見た夜空は雲一つ無く、星と満月が綺麗に浮かんでいた。
その部屋の灯りは、星と満月の光だけ。男の顔に月光が当たり、元々整っている顔立ちを更に美しく見せている。

コンコン。

静寂をその部屋への来客者が破った。
男の目が開かれる。目は満月より綺麗に輝く金色だった。
「入れ。」
さほど大きくないのに良く通る声が響く。声のトーンは青年らしい音程だがやはり声には相手には有無を言わせないような圧力があった。

ガチャ。

「失礼します。」
部屋の主に許可が下り、一人の少年が入ってきた。男は顔を扉側に向ける事無く、目だけを動かす。
「…シュベルか。どうした?」
「フュリシュル国、フュリシュル城、制圧、完了致しました。」
青髪、紫眼の少年が恭しく頭を垂れる。
「そうか。良くやったと騎士達にも言っておいてくれ。」
まあ、作戦は私が立てたがな。
前回は抵抗したフュリシュル国だったが今回は大人しく城を明け渡した。やはり前回、女王と王を無くしたのが痛手だったのだろうな。
まあ二人とも私の目障りだから私が消してやったのだが。
「あともう一つ。これは僕自身の考え、推測なのですが、王。」
「王は性に合わないから止めてくれと言っただろう?」
落ち着いた者同士、ただただ淡々とした会話が続く。
「失礼致しました、ゲイル様。」
シュベルが私の名を呼ぶのを確認し、目で先を促す。

更新日:2013-12-19 14:19:12

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