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第9話「優しさ」

あれから30秒くらいたった。
けど、一向に距離は縮まない。

「成瀬くん」
『わっ・・・佐藤!』
「君はそんなにフラフラでどうやって班まで運ぶつもりだい?」
『別に・・・余裕だし』

そう言ってまた再スタートするものの、足元の段差につまづいた拍子にマキを何本か落とした。

「お貸しなさい」

落ちたマキも一緒に簡単に持ち上げた。

『ちょ・・・それ重いからっ』
「知ってるって。だから俺が持ってんじゃん」
『や、でも・・・』
「さっきのお礼!・・・って、ことでどう?」
『さっき?』
「肩を枕に貸してもらったお礼♪」
『えっ』

すると佐藤は振り向いて、明るくニカッと笑った。

『・・・分かった。じゃ、半分持つ』
「いーよ」
『いーから。あんたに借り作るのやなの!』

佐藤は一瞬きょとんとして、また明るく笑う。

「じゃ頼むわ」
『てゆーかあんた知ってたの?肩にのっけたって』
「あぁ、まーね。篠原に送りつけられたから」
『篠原も送ってたんだ・・・本当にあの2人・・・』
「ははっ」

・・・てゆーか。
ぶっちゃけ写メなんてどーでもいい。
何こいついきなり優しくなるとか調子狂うからやめてほしいんだけど!

「あれ?成瀬、顔赤くね?」
『うっさい知ってるってーの!』
「知ってんだ(笑)。・・・俺その顔されると期待しそーだから見ないでおこ」
『期待?なんの』
「こっちの話」

いたずらっぽくそう言うと、普通に歩き始めた。

『なんかあんた・・・メールあたりから、あたしに分かんない話持ちかけてばっか』
「男の事情さ」
『カッコつけてるとこ悪いけど全っ然カッコよくないから』
「・・・俺心折れそう」
『勝手に折れろ』
「・・・お前俺のことどんな存在に扱っ『バカ?』」
「・・・・・・」

勝った。

『いーから早く戻るよ』

いいでしょ?これぐらいの仕返ししたって。
あたしの調子、散々狂わせたんだから。

「成瀬ドSだろ」
『未央だからMかな』
「絶対分かってて言ってるこいつ」
『あんたがMなんでしょ』
「気が優しいんだよ。俺、佐藤だからSだし♪」
『・・・(怒)』

まぁいいか、マキ持ってくれてるし。
そのかわり・・・
あんたの優しさに少しだけドキッとしたこと、教えてあげない。
ざまみろバカ。

更新日:2012-08-23 16:51:52

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