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第6話「なんて言ったの?」

『はぁ??!!』
「ちょっと未央、鼓膜破れる・・・」
『あ・・・ごめん、つい・・・』

移動教室1日目。
あたしが叫ぶのも無理はない。だって、バスの相席が
・・・佐藤なんですから。

「しゃーねーじゃん。くじ引きなんだし?」
『うっわ・・・史上最高に有り得ない』
「ははっ、ひでー」

とは言っても、なんだかそこまでイヤじゃない気がして、あたしは佐藤の隣に座った。

「そんなにイヤ?」

そうでもない。
それがあたしの本音。でも、素直に言うほどいい子じゃないんだ、あたし。

『うん、好きな人が実はオネエだったぐらいイヤ』
「・・・ふはっ・・・んだよそれ・・・!はははっ・・・!」
『ちょ・・・そんな笑わなくても・・・///』

顔が熱くなるのを感じた。
いきなり笑顔とか・・・柄にもなく動揺すんでしょーがバカ!

「・・・お、虹だ」

今朝は夜明け頃から雨が降ってた。今はもう青空だけど、さっきまでの水滴がまだ残ってる。

『わ・・・すご!あたし虹なんて何年ぶりかな。キレー・・・!』
「!」

って、あたしってばなに無邪気に喜んで・・・。

「・・・なんだよその可愛い反応・・・」
『え?何よ』
「なんでもねーよっ」

佐藤は少しムスッとした表情で、ぱっと目をそらした。

『意味不明なんですけど』
「不明のほーがいいよ」
『はぁー?』

結局、佐藤が呟いた内容を教えてくれることはなかった。

更新日:2012-08-21 11:56:45

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