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■二時間前
ぱぁん、と銃声が響く。
それを合図に、一列に並んでいた少女たちが一斉に走りだす。
県庁所在地にある市民運動場では、中体連の陸上競技が行われていた。
埃っぽい風が、顔に吹きつける。
「八木さん?」
後ろから声をかけられて振り向いた。見覚えのある女子が小さく手を振りながら駆け寄ってきている。確か隣の校区の生徒だったはずだ。前の大会でも顔を合わせていた。
「小森さん」
「久しぶり。ね、今年、そっちの学校、人少ないよね。宮田さんとか、吉谷さんとかどうしたの?」
無邪気に尋ねられて、僅かにためらう。
「うん……。今年は、ちょっと怪我した人が多くて」
「え? そうなの?」
ぱっ、と相手の表情が変わった。驚いたような、心配したような。
「うん。気をつけないとね」
そう、あれは怪我だ。そういうことになった。
そういうことに、なってしまったのだから。
視線を、ふらりとさまよわせる。見渡せる限りの観客席に、あの男の姿は見えない。
それを合図に、一列に並んでいた少女たちが一斉に走りだす。
県庁所在地にある市民運動場では、中体連の陸上競技が行われていた。
埃っぽい風が、顔に吹きつける。
「八木さん?」
後ろから声をかけられて振り向いた。見覚えのある女子が小さく手を振りながら駆け寄ってきている。確か隣の校区の生徒だったはずだ。前の大会でも顔を合わせていた。
「小森さん」
「久しぶり。ね、今年、そっちの学校、人少ないよね。宮田さんとか、吉谷さんとかどうしたの?」
無邪気に尋ねられて、僅かにためらう。
「うん……。今年は、ちょっと怪我した人が多くて」
「え? そうなの?」
ぱっ、と相手の表情が変わった。驚いたような、心配したような。
「うん。気をつけないとね」
そう、あれは怪我だ。そういうことになった。
そういうことに、なってしまったのだから。
視線を、ふらりとさまよわせる。見渡せる限りの観客席に、あの男の姿は見えない。
更新日:2012-07-19 23:37:26