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どうやらこれらしいな、適当に抜いてみるか

薮「言われンでもきちんと片付けておる。わたしは散らかすのが嫌いでな」

石「いえ、そうじゃないんで、あたしの歯のほうで」

薮「ハッハッハッ、ころっと忘れておった」

石「笑ってる場合じゃありませんよ、センセー」(独り言)(大丈夫かな、ンとうに。え、だいたい名前が良くないよ、薮井なんて、昔からへぼに決まってんだ)

薮「さあ、横になりなさい。口を開けて」

石「アー」

薮「変わった口だ。うん、中に毛が生えてるな」

石「ヤダよ、センセー、鏡みてーの、鼻ン中つっこんじゃ」

薮「なに?こりゃ鼻の穴か、大きい穴だね、口かと思った」

石「驚いたね、どうも、鼻の穴と口イ、間違えられちゃあたまんねえや。花粉症じゃねえんだけどな。センセー、歯アやっておくんなさい」

薮「ハッハッハ、キミのツラ見てるとつい冗談を言いたくなる。得なツラしてるな。そんで女が引っかかるんだな・・・ではボチボチとりかるか」

石「オットットッ、その鏡みてえの、鼻汁がついてるよ、ちょいと洗ってくださいな」

薮「自分の鼻汁だ、構わないからなめちゃいなさい」

石「ずぼらなセンセーだね、どうも、ンじゃ、お言葉に甘えまして・・・塩ッ辛いね、こりゃ、塩分の取りすぎだ、気をつけなくっちゃいけねえな」

薮「ぶつぶつ言ってないで口を開けなさい」

石「アー」

薮「どれかな、痛むのは?」

石「えー、どれでしょう」

薮「どれでしょうというヤツがあるか。自分の痛いところがわからんようでは、わしのほうはもっと分からんではないか。ウーン、どうやらこれらしいな、適当に抜いてみるか」

石「ワッ、適当に抜くんですか。やだよ、センセー、適当に抜いちゃア、調べてからやっておくんなさい。ほかじゃ、レントゲンとか、X線とか使ってるんですがね」

薮「おぬし、わしの治療にけちをつける気か」

石(独り言)(ウワッ、すごいね、目がすわってるよ。どうも、たいへんなとこへ来ちまったな。変だと思ったんだ、待合室に誰もいねえ、なんてのはナ。みんな逃げちまうんだ、二度と来やしねえや)

更新日:2009-02-28 14:51:18

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