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第一章 イメージチェンジ

挿絵 378*71

引越しを終えたすみれは自分の部屋の窓を開けた。


よく晴れ上げた空には、かもめが空に浮かぶ姿が見え、


海風が優しく頬を包んだ。


すみれはその海に微笑んで深呼吸をした。


そんな姿をテーブルでお茶を入れながら、


見ていた編集部の洋子が、「すみれさん、何でこんな安コーポを選んで、


住み着こうと思ったのですか」と、尋ねる洋子に、


すみれは、「たまたま横須賀の物件探していたら、


具合の良い所にここが在ったの」と、


海を見詰めながら答えた。


洋子は納得行かぬ様子で、「西海岸でも、イタリアのシシリー島でも、


良かったのでは無いのですか。


期限は半年有るのですよ」と、語りかけると、


すみれは洋子に振り向いて、「ここなら日本語が通じるでしょ、


第一私は、今までろくな恋愛なんてした事が無いのよ。


寄りによって私が、恋愛小説なんて描けると思うの」と、いささか呆れていた。


すると洋子は、お茶お入れ終えて、「すみれさん、


今後の執筆活動を続けて行きたいのならば、


大幅に作品の趣旨を変えるしか有りません。


確かに今でもオカルトは 一部のマニアにはうけていますが、


ライバルも多くそれにですね」と、話した所で、


すみれが阻んで、「解っているわよ、だんだんどの作品も似た様な文面に成るから、


ファンも飽きて来ているのは承知しているわ」と、


嘆いてテーブルに歩いて行き椅子を引いて座った。


そして頬杖を付いて浮かぬ顔付きで、「恋愛か、気が重いわ」と、


一つため息を付いた。


その時、洋子は、「サプライズと言う事も有りますよ。


今まで手掛けた事の無いジャンルに、飛び込んで見るのも、


恋愛専門で書いている作家とは、


違う発想が生まれる可能性も有りますよ」と、励ました。


だがすみれは納得が行かなかった。


置かれたお茶をすすりながら、5月の久里浜はかもめが鳴いていた。




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更新日:2014-05-28 11:36:20

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