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section8
高速を降りてしばらくは東京らしくない緑豊かな道を走っていたが、急に車が止まった。どうやら目的地に到着したらしい。
「到着したよ。ケイジさん方。アキコがなぜ君たち二人に会いたいのか知
らないが、彼女の希望だ。期待に背かないでくれよ。」
「ご心配なく。あたしはいつもみんなの期待を裏切らないわ。」
涼子は本気でピーターを気色悪がっているのだが、口だけはいつもの通りだった。
「ふふ。それは楽しみだよ。美しいお嬢さん。おっとその前に。」
そう言ってピーターは、涼子の首にかけられていたスカーフをそっと外
す。
「いやらしいはずしかたね。」
涼子が睨むがピーターは意に返さない。
「噂は聞いているよ。これは、君と同じくらい美しく、危険なものらしいな。」
ドアが開けられ、前列のシートが倒される。ピーターが先に降りて、銃口をこちらに向けたまま降りろと示唆した。
涼子が大人しく降りたので、私もその後を続いて降りた。
眼前に広がるのは、自然の中にそびえたつ大きな建物で、それは沢口の部屋で見たパンフレットと同じ景観だった。
「どうやら、イメージ通りに作れたようね。」
「無駄口たたかずにとっとと歩け。余計なことをしたら構わず撃つ。」
拳銃を向けている人数はピーター一人から、2人に増えている。
大きな病院の入り口かのような、半円状のガラス張りのエントランスの方へ向かっていった。ここまで来たのだ、ピーターの心酔するアキコさんに会って行かなくてどうする。
エントランスは自動で開き、我々を迎え入れた。
入って見て、その内部に思わず目をみはる。
外見は立派な老人ホームのように見えたが、中身はまるでヨーロッパにある古城の様だ。大理石が敷き詰められた不必要に広いエントランスには、豪奢なペルシャ絨毯が敷いてあり、女神をかたどったかのような私の身長ほどの像が我々を迎えていた。天井は吹き抜けで、豪華なシャンデリアがかけられている。目の前には、彫刻が施されている大理石の回り階段があってそこには踊り場まである。2階には回廊のようになっている様子で、いくつもの部屋があるようだった。
もちろん、一階部分にも部屋に繋がると思われるドアがいくつもある。
そして、大勢のスーツの男たちも当然のように我々を待ちかまえていた。
「へー。老人ホームも変わったわね。老人がいるのに階段って、優しくないんじゃない?」
「今更だな。ここは老人ホームではなく、アキコと私の城だよ。」
「だとしたら、ちゃんと企業から住居の変更を申請しなきゃね。」
「すべてが終わったらそうさせてもらうよ。」
涼子はわざと当たり前のことを言って挑発したが、ピーターは終始余裕の表情だった。
「その右から2番目の部屋に入れ。」
ピーターがそう言うと、そのドアの前にいたスーツの男が扉を開く。
私が先頭になって入ってみると、そこは20畳ほどの広いだけの応接室であった。
簡素ながらも家具は立派なようで、3人掛けのソファが一つと一人掛けのソファ2つとが向い合せでおいてあり、中央にはコーヒーテーブルもあった。天井は高く、3mほどはあるだろう。
扉を入って右側の壁一面には、外につながる窓が埋め込まれている。それは通常の住宅よりも大きなもので、さらに窓の上も天井まで届くガラスが埋め込まれていた。折り畳み式の縦型ブラインドが壁の両端に備え付けられており、窓からは緑豊かな庭も望める。
「ここで大人しくしていてもらおう。」
そう言ってピーターは出ていった。
私と涼子は立っていても間が抜けているので、3人掛けの方のソファに腰掛けることにした。
私は小声で上司に進言する。
「どうします?見張りが4人いますよ?」
2人はドアの付近に。もう2人は窓のあたりにいる。今は手にはなにも持っていないが拳銃を所持しているのは明らかだろう。
「あたしたち2人に4人ってオオゲサよね。」
涼子は持て余したように、美しいその指を組み合わせながら呟く。
あなた一人に10人でも足りないくらいですよ。と言う言葉はとりあえず飲み込んでおいた。
「到着したよ。ケイジさん方。アキコがなぜ君たち二人に会いたいのか知
らないが、彼女の希望だ。期待に背かないでくれよ。」
「ご心配なく。あたしはいつもみんなの期待を裏切らないわ。」
涼子は本気でピーターを気色悪がっているのだが、口だけはいつもの通りだった。
「ふふ。それは楽しみだよ。美しいお嬢さん。おっとその前に。」
そう言ってピーターは、涼子の首にかけられていたスカーフをそっと外
す。
「いやらしいはずしかたね。」
涼子が睨むがピーターは意に返さない。
「噂は聞いているよ。これは、君と同じくらい美しく、危険なものらしいな。」
ドアが開けられ、前列のシートが倒される。ピーターが先に降りて、銃口をこちらに向けたまま降りろと示唆した。
涼子が大人しく降りたので、私もその後を続いて降りた。
眼前に広がるのは、自然の中にそびえたつ大きな建物で、それは沢口の部屋で見たパンフレットと同じ景観だった。
「どうやら、イメージ通りに作れたようね。」
「無駄口たたかずにとっとと歩け。余計なことをしたら構わず撃つ。」
拳銃を向けている人数はピーター一人から、2人に増えている。
大きな病院の入り口かのような、半円状のガラス張りのエントランスの方へ向かっていった。ここまで来たのだ、ピーターの心酔するアキコさんに会って行かなくてどうする。
エントランスは自動で開き、我々を迎え入れた。
入って見て、その内部に思わず目をみはる。
外見は立派な老人ホームのように見えたが、中身はまるでヨーロッパにある古城の様だ。大理石が敷き詰められた不必要に広いエントランスには、豪奢なペルシャ絨毯が敷いてあり、女神をかたどったかのような私の身長ほどの像が我々を迎えていた。天井は吹き抜けで、豪華なシャンデリアがかけられている。目の前には、彫刻が施されている大理石の回り階段があってそこには踊り場まである。2階には回廊のようになっている様子で、いくつもの部屋があるようだった。
もちろん、一階部分にも部屋に繋がると思われるドアがいくつもある。
そして、大勢のスーツの男たちも当然のように我々を待ちかまえていた。
「へー。老人ホームも変わったわね。老人がいるのに階段って、優しくないんじゃない?」
「今更だな。ここは老人ホームではなく、アキコと私の城だよ。」
「だとしたら、ちゃんと企業から住居の変更を申請しなきゃね。」
「すべてが終わったらそうさせてもらうよ。」
涼子はわざと当たり前のことを言って挑発したが、ピーターは終始余裕の表情だった。
「その右から2番目の部屋に入れ。」
ピーターがそう言うと、そのドアの前にいたスーツの男が扉を開く。
私が先頭になって入ってみると、そこは20畳ほどの広いだけの応接室であった。
簡素ながらも家具は立派なようで、3人掛けのソファが一つと一人掛けのソファ2つとが向い合せでおいてあり、中央にはコーヒーテーブルもあった。天井は高く、3mほどはあるだろう。
扉を入って右側の壁一面には、外につながる窓が埋め込まれている。それは通常の住宅よりも大きなもので、さらに窓の上も天井まで届くガラスが埋め込まれていた。折り畳み式の縦型ブラインドが壁の両端に備え付けられており、窓からは緑豊かな庭も望める。
「ここで大人しくしていてもらおう。」
そう言ってピーターは出ていった。
私と涼子は立っていても間が抜けているので、3人掛けの方のソファに腰掛けることにした。
私は小声で上司に進言する。
「どうします?見張りが4人いますよ?」
2人はドアの付近に。もう2人は窓のあたりにいる。今は手にはなにも持っていないが拳銃を所持しているのは明らかだろう。
「あたしたち2人に4人ってオオゲサよね。」
涼子は持て余したように、美しいその指を組み合わせながら呟く。
あなた一人に10人でも足りないくらいですよ。と言う言葉はとりあえず飲み込んでおいた。
更新日:2012-08-18 23:16:19