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section7

 しばらく他に手がかりになりそうなものを捜したが、パンフレット以上のものが出てこなかったので、沢口の部屋の捜索は打ち切って警視庁に戻ることにした。

 参事官室に戻るなり涼子は、貝塚さとみと丸岡警部を部屋に呼ぶ。

「今までで解っている限りでいいの。どう?なんか分かった?」

涼子の問いかけにまず答えたのは丸岡警部だった。

「東京都の派出所に電話はかけまくってるんですが、まだ1/3も終わらない状況で。ただ、確かに20代前半くらいの男性が、就職の研修に行くと言ったまま帰ってこないという相談は、今まで調べた中で3件ありました。どれも、相談程度で終わったみたいですが。」

「そう。さとみちゃんの方はどう?」

涼子の言葉に貝塚さとみは頷き、手に持っていた書類に目を落とした。

「警視の言われたように、ここ2~3ヶ月以内での捜索願を調べてみました。」

貝塚さとみは、プリントアウトした書類から目を離さず続ける。

「20代前半の男性で、捜索願が提出されているケースは15件ありました。その中から7人ほどの男性が、沢口篤志と同様の理由で行方不明になっています。」

7人も?私は涼子の顔を見た。彼女は両腕を組ながら目を閉じて聞いていた。

「不思議なくらい一致してるんですよぉ。家族の話だと、介護付き老人ホームの管理職とか。すぐに研修に出るとか、1週間くらい連絡がとれなくなるとか、長引くかもっていう事も言っていたそうです。」

貝塚さとみは言葉を切り、次の書類をめくる。

「えーとぉ。大抵の家族は、行き先や会社名などを聞いてなかったようなんですが、1件だけ無理矢理聞き出したそうで。なんでもグランディアナ株式会社と言う会社らしくて。」

グランディアナ。沢口の部屋にあったパンフレットの会社と同じだ。

「でもぉ調べてもそんな施設も会社もないってことでぇ。警察が調べたら1件あったそうなんですが、実質稼働してないみたいです。」

「担当者も、心あたりがない。実働してないことをいいことに悪用されたと言って門前払いだったそうですぅ。」

 手がかりらしきものが掴めたのに、あと一歩というところを悔しがっているようだ。友達の為と言うのもあるが、やはり彼女も立派な警察官である。

そんな貝塚さとみに涼子は声をかけた。

「沢口の部屋からも、その会社のパンフレットが見つかったわ。」

涼子は沢口の部屋から持ってきたパンフレットをディスクの上に置く。

「それじゃぁ。このグランディアナって言うところが。」

貝塚さとみは目を丸くしてパンフレットに見入っていた。

「さとみちゃん。友達のカレシはあたしがきっと見つけるわ。おつかれさま。もう通常業務に戻って。丸岡さんも。みんなにそう伝えて」

 そう告げる涼子の瞳は理知的な輝きがましている。手応えをつかんだのだろう。

丸岡警部と貝塚さとみは顔を見合わせている。

「でも・・・。」

「詳しくは終わったら説明してあげる。だから仕事に戻りなさい。」

涼子がそう言うので、二人はしぶしぶといった態で自分の席に戻っていった。
 

更新日:2012-08-09 21:48:11

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幻惑都市奇譚~薬師寺涼子の怪奇事件没ファイル1~