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始まりと終わり 僕等VSカラス団体

「起きっろー!」

「ん……」

「もう六時半だぞー?」

 霰(あられ)専用の召使い、バイパーに言われた僕は真新しいベッドから飛び上がった。寝坊は大変なことだと知っていたからだ。僕はパジャマを慌てて脱いで、バイパーが持っていた紅茶のカップを奪い取っていっきに飲んだ。そして服を雑に着て、扉を乱暴に開けた。階段を降りる前に、ニコニコと立っているバイパーに振り向いた。

「いってくるー!」

「じゃあねー」

 バイパーはニコニコ笑いながら、階段を駆け下りていく霰の背中を見守った。そして階段を上がっていく間、何かの気配を感じて僕は振り向いた。その瞬間、顔をつかまれ、階段に押し潰された。

「寝坊……か」

「う……ぅ……」

「寝坊が命取りになるかもしれない。わかっているな」

 それは僕の父親、ゾークだった。そして今一番会いたくない相手でもある。

「……ぁ……はぃ……」

 必死に声を振り絞って僕は言った。返事をしないと、罰が待っているからだ。しかし間抜けな蛙のような声が出てしまった。父親は僕の髪の毛を掴んで持ち上げた。そして階段の下へと放り出して、バイパーを呼んだ。バイパーはニコニコしながら降りてきた。そして地面に這いつくばっている僕を見て、少し焦った顔になった。

「二人とも、ついて来い」

「わかりました」

 バイパーは相変わらずニコニコした調子で答えた。僕は頑張って立ち上がり、立ち去っていく父親の背中を追いかけた。ついていかないと、遅れをとった罰を受けるからだ。普通の家系なら当然おかしいことだ。しかし僕の一家ではこれが日常茶番というやつだ。しかも、僕は十歳になるまでこれが普通だと信じていたくらいだ。

 なぜこんなに罰を受けるのか説明させてもらうと、僕が今いる状況に問題ある。

 王子・・・といったら胡散臭いかもしれない。でも、実際王子なんだから仕方ない。わが家系、ファントム家はカナルアという大陸を支配する王家だ。イコール、僕が王になればこの大陸を支配して、思うがままに出来るということだ。しかし、僕は王になることなど望まない。面倒な戦いに巻き込まれるだけだ。

 しかし、そんなことを親に言っても誰も聞き入れるなどしてくれない。なぜかというと、僕は兄弟の仲で最も期待されているからだ。僕以外の兄弟は梅雨、砂嵐、落雷、陽炎などがいるが、王になりたがっている梅雨は女。ファントム家の掟で、女性は王にはなってはいけないというものがある。梅雨は兄弟の中で一番王になることを望んでいるのにだ。そして砂嵐も強いが、磨けば僕の方が強くなるという父の計算で却下。本人もそっちの方が身が軽いといって喜んでいたし。落雷・・・あいつはすでに死んでいる。最も、殺したのは俺でもある。父親に命令されたからだ。父親の命令で兄弟を殺すなと思うかもしれないが許して欲しい。父さんは王なのだ。王が弱いわけがないし、命令違反は罰せられる。そして陽炎は単純馬鹿で猪突猛進のお馬鹿様だ。王になるどころか、コンビニの店長にもなれそうにない。客に騙されて、全商品を差し出してもおかしくないからだ。結局強くて、冷静で、王に向いているのは僕だけということになる。

 城の外に出たら、大きな花壇が道を作るように続いていた。昨日までは赤色や黄色などの明るい花が多かったが、今日になって青い薔薇や紫陽花などが植えられている。バイパーが僕を起こす時間が遅れたのはきっとそのせいだろう。母親のジョウナはバイパーにわざとそういう重労働をさせている

更新日:2012-07-06 06:05:06

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