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 ただならぬ様子の声に、更なる緊張感が走る。

「どうした、カミュ?」


「ミロの金色の髪が、漆黒に変わっていく!?」


「……そのフラグはひょっとして………………」


 なにやら心当たりの有りすぎるセリフに、シオンらを除く仲間がそれぞれにおっかなびっくりのぞき込むと。
 ミロがゆっくりと身を起こし、瞳を開いた。
 全員が思わず、こころもち退く。もともとミロは、アフロディーテとは別の方向だが非常に整った容姿をしており、意味もなく目力が凄い。その目が底光りし、さらに髪の色が漆黒になると、並み大抵のものではすまない威圧感があった。

「ミロ……違う、お前は……いや、貴方は、まさか……!!」

 カミュはさらに一歩退いた。
 心当たりが有りすぎる。特に彼とシュラにとっては、死のうが転生しようが二度とは関わり合いたくない相手である。

「そなたは確か、アクエリアスのカミュ、と申したな。そう……この度の聖戦に先立って、余が蘇らせた黄金聖闘士のひとりだ。覚えがある」
「く……っ」

 カミュが進退極まって呻くが、彼の黄金聖衣の表面の色まで、次第に黒い冥衣の色に変化しつつあった。
 思い込みの激しいうえに影響されやすい男である。
 その上、基本的に真面目で冗談が通じない。

 それを冷たく一瞥すると、ミロの姿を借りた何者かはシオンに向き直って告げた。

「なんという強引な呼び出し方をするのだ、聖域の教皇よ。いかにそなたらに敗れたとはいえ、いまだ冥王の座にあるこのハーデスに対し、無礼であろう」




「ははははははハーデスうううううぅぅぅーーーーー!!!!!!?????」



 だいたい察してはいたのだが、やはり驚愕の声をあげずにはいられない一同。

「しかも、今生の器であるアンドロメダではなく、別の魂を媒介にするとは。肉の身に護られていない魂に余が直接憑依すれば、依代はこのハーデスの魂に喰われ、完全に消滅するかもしれぬ。その危険を考えなかったのか」

 問いかけられたシオンは、完全に想定内だと言わんばかりの余裕をもって答えた。

「貴方がそうしてミロの姿をとどめているということが大丈夫だという証でしょうな。彼は蠍座の黄金聖闘士。充分に貴方の力を受け止められるはず」
「なるほど……黄道十二宮の支配星を利用したか。考えたな」

 ミロ、というより、どういうわけかミロに乗り移ったハーデスとシオンを取り巻いて、眼を白黒させていた黄金聖闘士たちだったが、別のかすかな呻き声が聞こえ、ぎょっとして視線を向けると、今度はアフロディーテがふらつきながら起き上がってきた。
 こちらは髪の色もそのままで、見た目には何の変化もない。

「アフロディーテ……?」
「 ―― では、ないんだろうな。たぶん……」
「じゃあ今度は誰だよ……」

 一同の見る前で、アフロディーテはふるふると頭を振って、それから当たりを見回した。
 ひとりひとりの顔を順番に見ていったその視線がカノンに止まると、やや不機嫌そうな口調で告げる。

「またお前なのか、シードラゴン。何度私の眠りを妨げるつもりだ」



「ポセイドンかあああぁぁ~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」

更新日:2012-07-04 15:44:55

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