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Chapter.4 蠍座と魚座は強制アップグレードされる
「アナザーディメンション!」
「ゴールデントライアングル!」
「…! こ、これは……っ!!」
威力を極小の一点に絞りこんで撃たれた双子の技によって、標的となった部分に引きずられるように、空間自体が大きく歪むのをムウは感じた。
その歪みがクリスタルウォールに伝わり、その表面に、わずかながらプリズムのような光彩が走る。
「効いているのか? 二人の技は!?」
「ええ……この空間全体を壊すことは無理でしょうが、小さな穴を穿つことくらいなら、できそうです……」
アイオロスが問うのにムウが頷く。クリスタルウォールの向こう側の七人の姿が、陽炎を通して見るように大きく揺れた。
次の瞬間。
「 ―― 六道輪廻!!」
シャカの声が高く響き、ぐらり、と世界が大きく傾いたような感覚を黄金聖闘士全員に与えた。
一歩も動くなと命じられたミロとアフロディーテは、危うくよろめきそうになりながらもかろうじて踏みとどまる。
「今だ、デスマスク!」
「積尸気冥界波ーーーーーーっ!!!!!!」
シオンが命じる声に応えて、デスマスクが全力をふるって積尸気冥界波を撃ち放つ。
「天空覇邪魑魅魍魎!」
すかさずシャカが第二撃を重ねた。
本来の彼らの力からすれば、まったく何の効果もないに等しい、目には見えない空間のわずかな裂け目。だがそれで充分だった。
向かい合う六人のちょうど中心、そこに妖しく揺らめく鬼火のようなものが漏れ出し、それが二つに分かれると、それぞれ別の色彩の光の塊になった。
ひとつは闇の色に凝結しながらも、日蝕の太陽が見せるコロナのように白い光を纏わせたもの。もうひとつは、豊かに輝く深い海のようなサファイアブルー。
そのふたつを、黒い方はサガ、青い方はカノンが素早く掴み取った。
そして。
「 ―― ミロ! 気に入らなければ、今度は私がスカーレットニードルを受けてやる!!」
「なにっ!?」
「すまん、アフロディーテ!! 後で借りは返すからこのまま消えるなよ!」
「なっ…カノン!?」
サガとカノンは叫ぶと、一連の動きでそのまま、目の前に立つミロとアフロディーテを拳で撃ち抜いた。
『 幻朧魔皇拳!!!! 』
「……な……」
刹那の、全員の自失。
それが一転、驚愕の叫びに変わる。
「ミ……ミロ……!!」
「アフロディーテっ!!」
見守っていたカミュやシュラたちが名前を呼ぶ声が交錯する中、二人がサガとカノンの足元にゆっくりと倒れ込んだ。
「幻朧魔皇拳は、精神を直接攻撃する技……そんなものを、いわば魂が剥き出しのこの状態で受ければ、あの二人は……」
アイオリアが呆然と呟くのに、カミュが息を呑み、弾かれたようにミロの側に駆け寄る。
「……ミロ!」
「おい教皇!! いったいこれはどういうことだ!? あんたここまで双子には命令してたのか!? シャレにならねーんだよあんたの企みはよ!!」
敬意をもった言葉遣いなど、それこそ異次元の彼方まで吹き飛ばして、デスマスクが叫ぶが、シオンはもちろん動じない。
「言ったはずだ。お前たちの連続技がもしも効いて、この封じられた空間に少しばかりの亀裂を入れられたとしても、人の力では脱出することはできないであろうと」
「そこまではな。だが問題はその先だ!それでミロとアフロディーテをサガたちに攻撃させるってのは、なんの意味があるんだよ!?」
「人の力ではかなわぬことも、神の力をもってすれば可能であるかもしれん。封印に対抗できる力を借りることにした。しかし、アテナの力はここには届かんようだ。ならば他の神々を呼ぶよりあるまい」
「ほ……他の神々って、何言ってんだ? まさかアスガルドのオーディーンとか?」
「意外に発想が豊かではないか、蟹。だが惜しいな。そこまで縁が遠くなると、私でも呼びかける術を持たん。しかしなかなか良い線だ」
虚を突かれたデスマスクの言葉に、シオンがふと破顔する。
ミロの傍らに膝をついて、必死に名前を呼びかけていたカミュが突然、身を退けて動揺した声をあげたのはその時だった。
「な、なに!? ……これは一体……!!」
「ゴールデントライアングル!」
「…! こ、これは……っ!!」
威力を極小の一点に絞りこんで撃たれた双子の技によって、標的となった部分に引きずられるように、空間自体が大きく歪むのをムウは感じた。
その歪みがクリスタルウォールに伝わり、その表面に、わずかながらプリズムのような光彩が走る。
「効いているのか? 二人の技は!?」
「ええ……この空間全体を壊すことは無理でしょうが、小さな穴を穿つことくらいなら、できそうです……」
アイオロスが問うのにムウが頷く。クリスタルウォールの向こう側の七人の姿が、陽炎を通して見るように大きく揺れた。
次の瞬間。
「 ―― 六道輪廻!!」
シャカの声が高く響き、ぐらり、と世界が大きく傾いたような感覚を黄金聖闘士全員に与えた。
一歩も動くなと命じられたミロとアフロディーテは、危うくよろめきそうになりながらもかろうじて踏みとどまる。
「今だ、デスマスク!」
「積尸気冥界波ーーーーーーっ!!!!!!」
シオンが命じる声に応えて、デスマスクが全力をふるって積尸気冥界波を撃ち放つ。
「天空覇邪魑魅魍魎!」
すかさずシャカが第二撃を重ねた。
本来の彼らの力からすれば、まったく何の効果もないに等しい、目には見えない空間のわずかな裂け目。だがそれで充分だった。
向かい合う六人のちょうど中心、そこに妖しく揺らめく鬼火のようなものが漏れ出し、それが二つに分かれると、それぞれ別の色彩の光の塊になった。
ひとつは闇の色に凝結しながらも、日蝕の太陽が見せるコロナのように白い光を纏わせたもの。もうひとつは、豊かに輝く深い海のようなサファイアブルー。
そのふたつを、黒い方はサガ、青い方はカノンが素早く掴み取った。
そして。
「 ―― ミロ! 気に入らなければ、今度は私がスカーレットニードルを受けてやる!!」
「なにっ!?」
「すまん、アフロディーテ!! 後で借りは返すからこのまま消えるなよ!」
「なっ…カノン!?」
サガとカノンは叫ぶと、一連の動きでそのまま、目の前に立つミロとアフロディーテを拳で撃ち抜いた。
『 幻朧魔皇拳!!!! 』
「……な……」
刹那の、全員の自失。
それが一転、驚愕の叫びに変わる。
「ミ……ミロ……!!」
「アフロディーテっ!!」
見守っていたカミュやシュラたちが名前を呼ぶ声が交錯する中、二人がサガとカノンの足元にゆっくりと倒れ込んだ。
「幻朧魔皇拳は、精神を直接攻撃する技……そんなものを、いわば魂が剥き出しのこの状態で受ければ、あの二人は……」
アイオリアが呆然と呟くのに、カミュが息を呑み、弾かれたようにミロの側に駆け寄る。
「……ミロ!」
「おい教皇!! いったいこれはどういうことだ!? あんたここまで双子には命令してたのか!? シャレにならねーんだよあんたの企みはよ!!」
敬意をもった言葉遣いなど、それこそ異次元の彼方まで吹き飛ばして、デスマスクが叫ぶが、シオンはもちろん動じない。
「言ったはずだ。お前たちの連続技がもしも効いて、この封じられた空間に少しばかりの亀裂を入れられたとしても、人の力では脱出することはできないであろうと」
「そこまではな。だが問題はその先だ!それでミロとアフロディーテをサガたちに攻撃させるってのは、なんの意味があるんだよ!?」
「人の力ではかなわぬことも、神の力をもってすれば可能であるかもしれん。封印に対抗できる力を借りることにした。しかし、アテナの力はここには届かんようだ。ならば他の神々を呼ぶよりあるまい」
「ほ……他の神々って、何言ってんだ? まさかアスガルドのオーディーンとか?」
「意外に発想が豊かではないか、蟹。だが惜しいな。そこまで縁が遠くなると、私でも呼びかける術を持たん。しかしなかなか良い線だ」
虚を突かれたデスマスクの言葉に、シオンがふと破顔する。
ミロの傍らに膝をついて、必死に名前を呼びかけていたカミュが突然、身を退けて動揺した声をあげたのはその時だった。
「な、なに!? ……これは一体……!!」
更新日:2012-07-04 15:48:25