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こほん、とミロがわざとらしく咳払いをした。
「ま、まあなんだ。細かいところはともかく、話の大筋はわかった……しかしサガ、俺とアフロディーテは何のためにいるのだ?」
「お前は話が早くて助かるな、ミロ。それに、事態がこれ以上足掻きようがないところまでいくと、もしかすると私たちの中で一番潔いかもしれん」
サガはかつて「神の化身」と呼ばれた頃を思い起こさせる、穏やかな笑みを見せた。
「それに、皆気づいていないようだが、お前は真の意味で強いからな。お前の心を挫くことは誰にもできまい」
「どういう意味だ? 誰が見ても、俺はシャカやお前にはまだ及ばん」
言葉の真意を探るという方向ではなく、本気で不思議そうに、しかもまっすぐに尋ね返すのが、ミロのミロたる所以である。
「何が出てくるかわからないから、それに備えろということか? しかしどう考えても精神攻撃系の技の持ち主しか役に立ちそうにないし、アフロディーテも俺も、その系統は不得手だぞ」
「君と私が相手の精神にダメージを与えるとすれば、もったいぶってとどめを刺すのを引き伸ばし、相手をじわじわいたぶるくらいしか思いつかないな」
一方のアフロディーテも、正直と言えばこれ以上正直なものはないが、なにかが決定的に間違っている台詞を吐いた。
「……そ、それは気付かなかった……アフロディーテ、お前も優しげな顔で身も蓋もないことを言うな……」
「君は自分の技の特性を理解していなかったのかミロ!? 私にはそのほうがショックだぞ! いや、何より、君の技は、派手さには欠けるが、極めて洗練されていて美しいのだ。自信を持て!」
「自信を持つ部分が違うような気がするが……」
言いかけて、ミロは、カミュの放つものとは別種の冷気を感じて口を閉ざした。
それを見て、アフロディーテもはっとして、もう一度サガを振り返る。
「……貴様らもいつまで無駄口を……」
「わ、わかった、サガ。だから黒化しなくてもいい。ちゃんとやる」
「で、私とミロは何をすれば……?」
「お前たち二人はここに立っていろ。ミロが私の前、アフロディーテはカノンの前だ」
「こ、こうか?」
指示されたとおりに立ち位置を変え、ミロはサガと、アフロディーテはカノンと向かい合って立った。
そしてシャカが、双子との間、正確に等距離を取って一歩後ろにつける。
「う……なんだか……真ん中の位置が前後の違いはあるが、アテナエクスクラメーションを撃たれそうな気がするな……シャカが眼を開いているから尚更だ」
「だ、大丈夫だ、ミロ。こちらにも黄金聖闘士が三人いるのだぞ。ほら」
「それ全然大丈夫じゃねぇしそいつはミロのセリフだろうが」
アフロディーテの視線を受けて、デスマスクが突っ込みつつも彼らの後ろ、シャカと向かい合う位置に立った。
「こんなもんでいいか?」
「よし。我々六人の、ちょうど真ん中の位置に、道を開く」
頷いたサガが、ゆっくりと構えを取りながら、少し離れたところにいるシオンを振り返った。
「教皇、では」
「頼むぞ。不発であってもこれ以上悪い状況にはならぬ。皆、全力でやってみろ」
シオンは頷き返し、カノンとシャカ、そしてデスマスク、ミロ、アフロディーテに順に微笑みかける ―― が。
「ミロ、アフロディーテ。お前たち二人は決してそこを動くな。何が起ころうと、一歩たりともだ。いいな」
最後の二人に向けた言葉は、ほとんど脅迫めいた命令だった。肯くこと以外にどんな反応もしようもない。
それを確かめ、さらにムウがクリスタルウォールを展開するのを見てから、シオンは命じた。
「サガ、カノン! 撃て!!」
「ま、まあなんだ。細かいところはともかく、話の大筋はわかった……しかしサガ、俺とアフロディーテは何のためにいるのだ?」
「お前は話が早くて助かるな、ミロ。それに、事態がこれ以上足掻きようがないところまでいくと、もしかすると私たちの中で一番潔いかもしれん」
サガはかつて「神の化身」と呼ばれた頃を思い起こさせる、穏やかな笑みを見せた。
「それに、皆気づいていないようだが、お前は真の意味で強いからな。お前の心を挫くことは誰にもできまい」
「どういう意味だ? 誰が見ても、俺はシャカやお前にはまだ及ばん」
言葉の真意を探るという方向ではなく、本気で不思議そうに、しかもまっすぐに尋ね返すのが、ミロのミロたる所以である。
「何が出てくるかわからないから、それに備えろということか? しかしどう考えても精神攻撃系の技の持ち主しか役に立ちそうにないし、アフロディーテも俺も、その系統は不得手だぞ」
「君と私が相手の精神にダメージを与えるとすれば、もったいぶってとどめを刺すのを引き伸ばし、相手をじわじわいたぶるくらいしか思いつかないな」
一方のアフロディーテも、正直と言えばこれ以上正直なものはないが、なにかが決定的に間違っている台詞を吐いた。
「……そ、それは気付かなかった……アフロディーテ、お前も優しげな顔で身も蓋もないことを言うな……」
「君は自分の技の特性を理解していなかったのかミロ!? 私にはそのほうがショックだぞ! いや、何より、君の技は、派手さには欠けるが、極めて洗練されていて美しいのだ。自信を持て!」
「自信を持つ部分が違うような気がするが……」
言いかけて、ミロは、カミュの放つものとは別種の冷気を感じて口を閉ざした。
それを見て、アフロディーテもはっとして、もう一度サガを振り返る。
「……貴様らもいつまで無駄口を……」
「わ、わかった、サガ。だから黒化しなくてもいい。ちゃんとやる」
「で、私とミロは何をすれば……?」
「お前たち二人はここに立っていろ。ミロが私の前、アフロディーテはカノンの前だ」
「こ、こうか?」
指示されたとおりに立ち位置を変え、ミロはサガと、アフロディーテはカノンと向かい合って立った。
そしてシャカが、双子との間、正確に等距離を取って一歩後ろにつける。
「う……なんだか……真ん中の位置が前後の違いはあるが、アテナエクスクラメーションを撃たれそうな気がするな……シャカが眼を開いているから尚更だ」
「だ、大丈夫だ、ミロ。こちらにも黄金聖闘士が三人いるのだぞ。ほら」
「それ全然大丈夫じゃねぇしそいつはミロのセリフだろうが」
アフロディーテの視線を受けて、デスマスクが突っ込みつつも彼らの後ろ、シャカと向かい合う位置に立った。
「こんなもんでいいか?」
「よし。我々六人の、ちょうど真ん中の位置に、道を開く」
頷いたサガが、ゆっくりと構えを取りながら、少し離れたところにいるシオンを振り返った。
「教皇、では」
「頼むぞ。不発であってもこれ以上悪い状況にはならぬ。皆、全力でやってみろ」
シオンは頷き返し、カノンとシャカ、そしてデスマスク、ミロ、アフロディーテに順に微笑みかける ―― が。
「ミロ、アフロディーテ。お前たち二人は決してそこを動くな。何が起ころうと、一歩たりともだ。いいな」
最後の二人に向けた言葉は、ほとんど脅迫めいた命令だった。肯くこと以外にどんな反応もしようもない。
それを確かめ、さらにムウがクリスタルウォールを展開するのを見てから、シオンは命じた。
「サガ、カノン! 撃て!!」
更新日:2012-07-04 15:11:24