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Chapter.3 教皇は謎の企みをめぐらす

「……え?」
「当たった?」
「エクスカリバーでカミュは斬られなかったぞ……」
「なんで、スカーレットニードルだけ、効果があるんだ?」
「す、すまん、カノン! まさか当たるとは!」
「……万が一を考えて手加減しろよミロっ!!」

 口々に驚きの声を上げる仲間のうちで、やはり平然としているのはシャカとムウ、シオン、童虎である。

「ほほぅ。対人限定では技の効果もあるようじゃな」
「むしろミロ対カノン限定というべきではないでしょうか。我々の中で、ミロのスカーレットニードルを、とどめのアンタレス一歩手前まで受けた経験があるのは限られますし、サガとシュラとカミュはその時すでに意識朦朧としていました。カノンはそうでない分、当たった時のイメージが強固に残っていたのでしょう」
「その経験が仇になったか。それほど痛い目を見ていてまだ懲りぬとは」
「……しかし、技の効果が出る場合もあるか……ふむ……それに……」
「いかがなさいましたか、教皇?」

考え込む様子を見せたシオンに、シャカが問い掛ける。

「シャカよ」
「はい」
「アイオロスの放った矢を探すついでに、この空間の様子をさぐってきたのであろう? お前にはどのように見えたか?」
「は、このシャカの目をもってしても、空間自体の広さはつかめませぬ。おそらく、我々に感じられる広さは無限ですが、他の次元には一切つながってはいない様子。むろん、冥界にも」
「だが、この閉じた空間の外には、我々の知るいずれかの世界があろうな」
「御意に」
「童虎よ。冥界の嘆きの壁は、黄金聖衣12体に蓄積された太陽の光で突破したはずだな? エリュシオンへの道へはアテナの血をもってこのシオンが蘇らせた神聖衣を纏った青銅聖闘士たちが向かった」
「ああ、そうじゃが、ここには神聖衣はもちろん、黄金聖衣の実体もないぞ」
「聖衣や我々自身の実体があろうとも、神の力でなされた封印だ。人の力では破れまい」

 シオンは腕を組んでしばし目を閉じる。

「それにしても、人の身であるはずの我らが、ハーデスやポセイドン同様に神による封印を受けるとは……」
「シオン、お主、何を考えておるのじゃ?」
「いや……過分な扱いだ、とな。神々は我々の魂を消滅させず、意識を残したまま永劫の闇に閉ざすことで罰を与えようとしたのだろうが、本来その場所はハーデス統べる冥界のタルタロス、あるいはコキュートスであったはず」
「それは、アテナが神代よりのハーデスの肉体を滅してしまったからのう。冥界もさぞかし混乱しておるじゃろうし、ハーデスとてどのような地獄にでも我々を受け入れる気などなかろうて……ん?」

 童虎も何かを察したらしいが、彼が続く言葉を発する前に、シオンが立ち上がった。

「なるほど、いくらやってもこれ以上死ぬことはない、か。至言であったな、カノンよ」
「きょ、教皇?」
「だがもう少し、悪あがきをしてみる価値はありそうだ。こちらへ参れ。それにシャカ。そこで影が薄くなっているサガもだ」
「……」(←サガ)
「本当ですね。以前の存在感はどうしたんですか、サガ。まるであなたの方がカノンの従属人格のようですよ」

 無言のまま頷いて従うサガだったが、内心にどのような思いがあったかはわからない。
 カノンの方は当然、この羊どもを一度くらいはジンギスカン鍋にでもしてシャカに無理やり食わせてやろうかと考えた。ただし、シャカが食えない肉は羊より牛の方が可能性が高そうではある。
 だがもちろん口には出さず、シャカ、サガとともにシオンに近づいた。
 その三人に何事か小声で告げるシオン。
 教皇の言葉が進むうち、サガとシャカには静かな、だが明らかな、カノンにはもっと鮮明な驚愕の表情が広がった。

「……あいつら、なに企んでやがるんだ?」
「聞こえたぞ、デスマスク」
「げっ!」

 不敬極まる言葉を洩らしたデスマスクは、同僚とひっくるめてあいつら呼ばわりした教皇に間髪いれず振り返られて身を縮めた。

「まあ、よかろう。事実企んではいる。そこの魚介と蠍、お前たちも来るのだ」

「は?」

 きょとんとしたのは、蠍座のミロ。

「魚介って、シオン教皇までその扱いかよ俺ら」
「それはもうしかたがないと諦めているが、どうして私と君とミロが一緒なのだ?」
「教皇……相変わらず腹の底の見えぬお人よ」
「いやミロそれシオンじゃねぇしサガの方だし」
「いいからさっさと行け甲殻類ども!」

 げしげしげしっ!

 蟹(介)ことデスマスクがぼやき、魚ことアフロディーテが首をかしげ、ミロがつぶやき、再びデスマスクがツッコみ、その三人をそれぞれシュラ、アルデバラン、アイオリアが蹴り飛ばした。

更新日:2013-01-01 03:09:06

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