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Chapter.2 乙女座は海龍兼双子座の片割れと喧嘩する
シャカ、そして彼と共に現れた射手座のアイオロスをにこやかに迎えたのは、もちろん、ムウである。
「ああ、おかえりなさい、シャカ。お茶がはいっていますよ、どうぞ」
「うむ、いただこう。ムウ、やはり君はよく気が利く」
果たして、気が利くの利かないのという問題だろうか、と疑問を抱いた者は、一部の例外を除いて多くいるはずだが、追求の無益さもまた、今更確かめるまでもなかった。
以前からムウとシャカというのは、なぜかお互いの意思の疎通がスムーズなようで、その分、他の者たちはこのけったいな超能力者コンビをやや遠巻きにせざるを得ない。
「君も座りたまえ、アイオロス」
「あ、ああ……」
黄金聖闘士最後のひとり、射手座サジタリアスのアイオロスは、シャカに促されるまま腰をおろしたが、状況を把握できずに周囲を見回し、脱力した弟アイオリアの姿を見つけた。
「アイオリア……大丈夫か?」
「お疲れ様でした、アイオロス。サジタリアスの矢は見つかりましたか?」
そこへムウが微笑みながら茶を出し、アイオロスはひとまず自分の疑問は棚上げにする。
「ああ……やはり、何にも命中せずに、射程距離ぎりぎりのところに落ちていた」
そう答えながら、アイオロスは、射手座の黄金聖衣付属の黄金の弓矢を背中に収納した。
「そうか。私のバラも何も捉えることができなかったし、シュラのエクスカリバーもまったく手応えがないようだ。あとは老師のライブラの武器くらいしか残っていないが……」
「俺のグレートホーンも、何にも当たらず跳ね返りもせん。物理的な攻撃は一切無効なようだな」
アフロディーテとアルデバランが呟く。
彼らはまず、アイオロスが黄金の矢を射ち、次にアフロディーテが、一切を噛み砕く牙を持つ黒バラ・ピラニアンローズ、手元から放たれるや敵の心臓に命中するはずの白バラ・ブラッディローズを連続で投擲してみた。
しかしいずれも的には当たらず、アイオロスがシャカを伴って矢を回収に行った間に、アルデバランも必殺技グレートホーンを放ってみたが、アイオリアたちと同様に、威力は雲散霧消するだけに終わったのである。
「先程、遠くから消えかけの線香花火のようなものがいくつか見えたが、あれはなんだね?」
「アイオリアが試しにライトニングプラズマを撃ってみたんですよ」
「そのあと、俺とサガがギャラクシアンエクスプロージョンを同時に撃ったが、それも効かん」
情け容赦なく言ったシャカの言葉に、ますますがっくりと肩を落とすアイオリアとサガにかわって、ムウとカノンが答えるが。
「ん……カノン? なぜ君がここにいるのだ?」
そのカノンとサガを見比べ、シャカは平然と尋ねた。
「嘆きの壁でサガと融合したのではなかったのかね? いつの間にまた分裂したのだ?」
「サガの別人格と一緒にするな!!」
光速でブチキレたカノンが怒鳴るが、むろん、それでシャカの鉄面皮にいささかの傷もつくわけではない。
傷つくのは、二人の言葉に古傷を抉られまくるサガのみである。
「おや、そうだったのか。私はてっきり、君は白サガ、黒サガに次ぐ第三人格かとばかり」
「殺すぞ貴様!」
13年間にわたって聖域を離れていた上、それ以前にもほとんどシャカと接点のなかったカノンは、彼の言動にまったく不慣れであり、素直にその台詞を真に受けてしまった。
くわえて、双子の兄サガ(ただし善人格)とは対照的に、おそらく「じっとしていられる状況か!」のミロ、「ええい面倒!」のアイオリアとベスト3を争える着火の速さである。
ただ、三人とも着火も速ければ消火も速く、喉元過ぎれば後腐れもなく熱さは綺麗に忘れるのだが、シャカはシャカで、たまに火に油を注いで喜ぶ節が見えるのだった。
悟っているのかいないのか、さっぱりわからない。
「先の花火でかね? やってみたまえ。どのみち我らは既に死んでいる」
「ならいくらやってもこれ以上死ぬことはないわけだ。上等よ! 立て、シャカ。もう3、4回殺し直してくれる!」
「フッ、君程度の力でこのシャカに挑もうとは愚かな」
「やかましい! ギャラクシアンエクスプロージョンが駄目ならこちらはどうだ! ゴールデントライアン……」
頭に血が昇ったカノンがシャカに向けて技を繰り出そうとした、その刹那。
「くらえ! 真紅の衝撃イイィ!!」
―― ビシィッ!!!
「……ぐわっ!」
「な、なにいっ!?」
先程のシュラ同様、不発に終わると思ったミロが冗談半分で(しかし全力で)スカーレットニードルを一発カノンに撃ち込んだが、なぜかそれは見事に命中し、カノンに悲鳴を上げさせたのだった。
「ああ、おかえりなさい、シャカ。お茶がはいっていますよ、どうぞ」
「うむ、いただこう。ムウ、やはり君はよく気が利く」
果たして、気が利くの利かないのという問題だろうか、と疑問を抱いた者は、一部の例外を除いて多くいるはずだが、追求の無益さもまた、今更確かめるまでもなかった。
以前からムウとシャカというのは、なぜかお互いの意思の疎通がスムーズなようで、その分、他の者たちはこのけったいな超能力者コンビをやや遠巻きにせざるを得ない。
「君も座りたまえ、アイオロス」
「あ、ああ……」
黄金聖闘士最後のひとり、射手座サジタリアスのアイオロスは、シャカに促されるまま腰をおろしたが、状況を把握できずに周囲を見回し、脱力した弟アイオリアの姿を見つけた。
「アイオリア……大丈夫か?」
「お疲れ様でした、アイオロス。サジタリアスの矢は見つかりましたか?」
そこへムウが微笑みながら茶を出し、アイオロスはひとまず自分の疑問は棚上げにする。
「ああ……やはり、何にも命中せずに、射程距離ぎりぎりのところに落ちていた」
そう答えながら、アイオロスは、射手座の黄金聖衣付属の黄金の弓矢を背中に収納した。
「そうか。私のバラも何も捉えることができなかったし、シュラのエクスカリバーもまったく手応えがないようだ。あとは老師のライブラの武器くらいしか残っていないが……」
「俺のグレートホーンも、何にも当たらず跳ね返りもせん。物理的な攻撃は一切無効なようだな」
アフロディーテとアルデバランが呟く。
彼らはまず、アイオロスが黄金の矢を射ち、次にアフロディーテが、一切を噛み砕く牙を持つ黒バラ・ピラニアンローズ、手元から放たれるや敵の心臓に命中するはずの白バラ・ブラッディローズを連続で投擲してみた。
しかしいずれも的には当たらず、アイオロスがシャカを伴って矢を回収に行った間に、アルデバランも必殺技グレートホーンを放ってみたが、アイオリアたちと同様に、威力は雲散霧消するだけに終わったのである。
「先程、遠くから消えかけの線香花火のようなものがいくつか見えたが、あれはなんだね?」
「アイオリアが試しにライトニングプラズマを撃ってみたんですよ」
「そのあと、俺とサガがギャラクシアンエクスプロージョンを同時に撃ったが、それも効かん」
情け容赦なく言ったシャカの言葉に、ますますがっくりと肩を落とすアイオリアとサガにかわって、ムウとカノンが答えるが。
「ん……カノン? なぜ君がここにいるのだ?」
そのカノンとサガを見比べ、シャカは平然と尋ねた。
「嘆きの壁でサガと融合したのではなかったのかね? いつの間にまた分裂したのだ?」
「サガの別人格と一緒にするな!!」
光速でブチキレたカノンが怒鳴るが、むろん、それでシャカの鉄面皮にいささかの傷もつくわけではない。
傷つくのは、二人の言葉に古傷を抉られまくるサガのみである。
「おや、そうだったのか。私はてっきり、君は白サガ、黒サガに次ぐ第三人格かとばかり」
「殺すぞ貴様!」
13年間にわたって聖域を離れていた上、それ以前にもほとんどシャカと接点のなかったカノンは、彼の言動にまったく不慣れであり、素直にその台詞を真に受けてしまった。
くわえて、双子の兄サガ(ただし善人格)とは対照的に、おそらく「じっとしていられる状況か!」のミロ、「ええい面倒!」のアイオリアとベスト3を争える着火の速さである。
ただ、三人とも着火も速ければ消火も速く、喉元過ぎれば後腐れもなく熱さは綺麗に忘れるのだが、シャカはシャカで、たまに火に油を注いで喜ぶ節が見えるのだった。
悟っているのかいないのか、さっぱりわからない。
「先の花火でかね? やってみたまえ。どのみち我らは既に死んでいる」
「ならいくらやってもこれ以上死ぬことはないわけだ。上等よ! 立て、シャカ。もう3、4回殺し直してくれる!」
「フッ、君程度の力でこのシャカに挑もうとは愚かな」
「やかましい! ギャラクシアンエクスプロージョンが駄目ならこちらはどうだ! ゴールデントライアン……」
頭に血が昇ったカノンがシャカに向けて技を繰り出そうとした、その刹那。
「くらえ! 真紅の衝撃イイィ!!」
―― ビシィッ!!!
「……ぐわっ!」
「な、なにいっ!?」
先程のシュラ同様、不発に終わると思ったミロが冗談半分で(しかし全力で)スカーレットニードルを一発カノンに撃ち込んだが、なぜかそれは見事に命中し、カノンに悲鳴を上げさせたのだった。
更新日:2013-01-01 02:47:57