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Chapter.1 牡羊座は茶をすする
「ライトニングプラズマーーーーーーーーーっっっ!!!!!!」
どれだけのものとも知れない、果てしない闇の深淵に、黄金聖闘士・獅子座レオのアイオリアの咆哮が響きわたる。
一切の光失せた世界を無数の黄金の閃光が切り裂…………
…………………………………………
…………かなかった。
ぱちっ。
パチパチ……ぱち。
アイオリアの光速拳の威力は、わずかなきらめきを発しはしたものの、そのほとんどが闇に呑み込まれ、虚しく四散する。
「閃光、というより、線香花火ですね」
身も蓋もないことを、きわめて穏やかに言ってのけるのは、同じく黄金聖闘士・牡羊座アリエスのムウであった。
「お……おのれ……黄金の獅子と呼ばれた、このアイオリアの渾身の拳すら通じんとは……!!」
がくりと地に膝をつくアイオリア。
「諦めるな、アイオリア」
「そうだ、まだ俺たちもいるぞ!」
「今度は私たちがやってみよう ―― ゆくぞ、カノン!」
鏡に映したかのように瓜二つの姿かたちと、まず声だけならば絶対に判別は不可能な二人。
双子座ジェミニのサガと、その弟カノンは、アイオリアの頭ごしに視線を交わすと、完璧無比のユニゾンで同じ技を放った。
『 ギャラクシアンエクスプロージョン!!!! 』
その破壊力は銀河の星々をも砕くと恐れられた、双子座必殺のギャラクシアンエクスプロージョン×2。
……ぱちぱちぱちぱち。
パチパチパチパチ……。
きらきらきらきら。
「可愛らしいですねぇ」
やはりアイオリアと同様に、がっくりとうなだれた双子の周囲に、つかの間きらめいた色とりどりの光の粒を見て、にっこり微笑んだムウは静かに湯呑を傾けた。
「あー。お茶が、おいしい」
「ムウお前、なにを呑気に茶なんかすす……って、茶ぁ!!??」
「 ――っっ !!!!????」
ツッコミをいれかけた蟹座キャンサーのデスマスクの、心底からの驚愕の声に、一同がそちらを振り返り、絶対零度の凍気を操る水瓶座アクエリアスのカミュすら例外でなく凍りついた。
ありえない。
これがギリシャ聖域の十二宮ならばまだ、違和感はあるが受け入れられる。
しかしここは、自分たちが死後、魂だけで封じられているはずの、トーテムポールめいた石像内部の異次元空間なのである。
肉体がないので厳密にはそれも違うが、闇の中でよく目を凝らして見てみれば、先代牡羊座、先の教皇でもありムウの師匠たるシオンと、シオンの戦友である「老師」こと天秤座ライブラの童虎、あげくに蠍座スコーピオンのミロまでが、仲良くちゃぶ台囲んで茶をすすっているのである。
誰がなんと言ってもありえない。
「ほう、これが星矢たちの国で飲む茶か。うまいな」
何がありえないと言って、人間瞬間湯沸かし器と囁かれ、この間のハーデス軍侵攻の際は、守護すべき天蝎宮を放り出して前線に出てきた、その気の短さは黄金聖闘士一、二を争うと言われる蠍座のミロが、この事態を意に介さぬかのように、羊師弟+老師と和んでいるというのが、まずありえない。
「ミ、ミロ……!? お前、いったい、どうした……」
「お前こそどうした、カミュ? おかしなものでも見るような顔をして」
「おかしいわっっっ!!!!!」
全員が声を揃えて突っ込んだ。カミュに至っては絶望一色に染め上げられた表情になると、それ以上は声も無くその場に崩折れる。
「しっかりしろ、カミュ!」
駆け寄ってそれを支える、アテナに最も忠誠心篤き男、そしてひそかに仲間思いの男、山羊座カプリコーンのシュラ。
「いや、ミロがお前らと茶なんぞ飲んでるのもおかしいが、それ以上に茶だのテーブルだのがあること自体がおかしいぞムウ! そんなものどこからどうやって出してきた!?」
「イメージですよ、イメージ」
黄金聖闘士一の巨漢、その体格にふさわしく豪放磊落な牡牛座タウラスのアルデバランが、声まで青ざめた様子で言うのに、ムウはあくまでも穏やかに返す。
「だいたい、私たち自体が既に肉体を失って魂だけの状態なんです。この空間で気がついたときのことを忘れたんですか? その時はぼんやりと自分の体の感覚の記憶だけしかなかったから、皆、黄金聖衣どころか一糸纏わぬマッ……」
「言うなああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!!」
やはり、立っている力も失ったかのようなカミュも残さずに、全員でツッコむ。
どれだけのものとも知れない、果てしない闇の深淵に、黄金聖闘士・獅子座レオのアイオリアの咆哮が響きわたる。
一切の光失せた世界を無数の黄金の閃光が切り裂…………
…………………………………………
…………かなかった。
ぱちっ。
パチパチ……ぱち。
アイオリアの光速拳の威力は、わずかなきらめきを発しはしたものの、そのほとんどが闇に呑み込まれ、虚しく四散する。
「閃光、というより、線香花火ですね」
身も蓋もないことを、きわめて穏やかに言ってのけるのは、同じく黄金聖闘士・牡羊座アリエスのムウであった。
「お……おのれ……黄金の獅子と呼ばれた、このアイオリアの渾身の拳すら通じんとは……!!」
がくりと地に膝をつくアイオリア。
「諦めるな、アイオリア」
「そうだ、まだ俺たちもいるぞ!」
「今度は私たちがやってみよう ―― ゆくぞ、カノン!」
鏡に映したかのように瓜二つの姿かたちと、まず声だけならば絶対に判別は不可能な二人。
双子座ジェミニのサガと、その弟カノンは、アイオリアの頭ごしに視線を交わすと、完璧無比のユニゾンで同じ技を放った。
『 ギャラクシアンエクスプロージョン!!!! 』
その破壊力は銀河の星々をも砕くと恐れられた、双子座必殺のギャラクシアンエクスプロージョン×2。
……ぱちぱちぱちぱち。
パチパチパチパチ……。
きらきらきらきら。
「可愛らしいですねぇ」
やはりアイオリアと同様に、がっくりとうなだれた双子の周囲に、つかの間きらめいた色とりどりの光の粒を見て、にっこり微笑んだムウは静かに湯呑を傾けた。
「あー。お茶が、おいしい」
「ムウお前、なにを呑気に茶なんかすす……って、茶ぁ!!??」
「 ――っっ !!!!????」
ツッコミをいれかけた蟹座キャンサーのデスマスクの、心底からの驚愕の声に、一同がそちらを振り返り、絶対零度の凍気を操る水瓶座アクエリアスのカミュすら例外でなく凍りついた。
ありえない。
これがギリシャ聖域の十二宮ならばまだ、違和感はあるが受け入れられる。
しかしここは、自分たちが死後、魂だけで封じられているはずの、トーテムポールめいた石像内部の異次元空間なのである。
肉体がないので厳密にはそれも違うが、闇の中でよく目を凝らして見てみれば、先代牡羊座、先の教皇でもありムウの師匠たるシオンと、シオンの戦友である「老師」こと天秤座ライブラの童虎、あげくに蠍座スコーピオンのミロまでが、仲良くちゃぶ台囲んで茶をすすっているのである。
誰がなんと言ってもありえない。
「ほう、これが星矢たちの国で飲む茶か。うまいな」
何がありえないと言って、人間瞬間湯沸かし器と囁かれ、この間のハーデス軍侵攻の際は、守護すべき天蝎宮を放り出して前線に出てきた、その気の短さは黄金聖闘士一、二を争うと言われる蠍座のミロが、この事態を意に介さぬかのように、羊師弟+老師と和んでいるというのが、まずありえない。
「ミ、ミロ……!? お前、いったい、どうした……」
「お前こそどうした、カミュ? おかしなものでも見るような顔をして」
「おかしいわっっっ!!!!!」
全員が声を揃えて突っ込んだ。カミュに至っては絶望一色に染め上げられた表情になると、それ以上は声も無くその場に崩折れる。
「しっかりしろ、カミュ!」
駆け寄ってそれを支える、アテナに最も忠誠心篤き男、そしてひそかに仲間思いの男、山羊座カプリコーンのシュラ。
「いや、ミロがお前らと茶なんぞ飲んでるのもおかしいが、それ以上に茶だのテーブルだのがあること自体がおかしいぞムウ! そんなものどこからどうやって出してきた!?」
「イメージですよ、イメージ」
黄金聖闘士一の巨漢、その体格にふさわしく豪放磊落な牡牛座タウラスのアルデバランが、声まで青ざめた様子で言うのに、ムウはあくまでも穏やかに返す。
「だいたい、私たち自体が既に肉体を失って魂だけの状態なんです。この空間で気がついたときのことを忘れたんですか? その時はぼんやりと自分の体の感覚の記憶だけしかなかったから、皆、黄金聖衣どころか一糸纏わぬマッ……」
「言うなああああああぁぁぁぁっっっ!!!!!!」
やはり、立っている力も失ったかのようなカミュも残さずに、全員でツッコむ。
更新日:2012-07-04 13:59:39