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「ミロ……駄目だ……!」

 尚も呼びかけるカミュに、ミロは笑顔を向けた。

「カミュ。お前は必ず、地上へ戻れ……氷河が待っているぞ。そして皆を ―― アテナを頼む」

 カミュは唇を噛んだ。

「……わかった……ミロ、お前の心は……決して無駄にはしない!」

が、やがてためらいを振り切るように一度、きつく目を閉じると、両手を組みあわせ、高く掲げる。

「……やむを得まい」

 そこへ、シャカ、そしてサガとカノンの三人が静かに進み出た。

「ミロとアフロディーテがそこまでの覚悟を決めているというならば、二人だけをむざむざ消滅させるわけにもいかん」
「我ら三人は、わずかな力ではあったが、先ほど次元の穴を穿つことができた。今度はアンタレスの超新星爆発に合わせて、空間ごと打ち砕いてやろう」
「ポセイドン、何度も安眠妨害して悪かったが、これで最後だ。ハーデスと共に消えてもらうぞ!」

 シャカはゆっくりと手前に腰を落とし、サガは右に、カノンは左につけて、三位一体の構えを取った。

「……へっ、ハーデス融合のミロのアンタレス超新星に、俺の積尸気冥界波とカミュのオーロラエクスキューション、とどめに双子とシャカ、文字通り神レベルの最強アテナエクスクラメーションか。こいつはいくら一人一人の力が減殺されていたって、空間の一つや二つ吹っ飛ばして釣りが来るぜ」

「もうひとつだ」

 落ち着き払った声が告げ、それに弓を引き絞る音が続く。
 射手座アイオロスの黄金の矢が、狙いを定めた。

「ハーデス、忘れてはいまい。我ら黄金聖闘士がすべての力を込めたこの黄金の矢で、冥界の嘆きの壁を砕いたことを。今度はアンタレスと共に貴方の魂を射抜く!」
「……こりゃいいぜ、アイオロス。お前までやる気かよ」
「教皇、アイオリアたちを頼みます。ここで私とミロ、アフロディーテ、サガたちまでが消えたとしても、まだアイオリアとシュラ、ムウ、アルデバラン、老師……あるいはデスマスクとカミュも残る。彼らだけでも地上へ戻れれば、必ずアテナと若き青銅聖闘士たちを救うことができるでしょう」
「……お前もまた、我が身の犠牲を厭わぬか、アイオロス」
「兄さん……!!」

 アイオリアが兄のもとへ駆け寄ろうとしたが、それより早く、ムウが再びクリスタルウォールを展開し、彼の行動を阻んだ。

「……ムウ!」
「アイオリア、何度も私に、同じことを言わせないでください。この中で一人でもいい、なんとしてでもここを脱出し、いま地上で戦っているはずの星矢たちを、そしてアテナを救うのです」
「ミロたちを見殺しにしろと言うのか、ムウ!」
「もしも力が足りなければ、私もスターライトエクスティンクションを撃ちます。そうすれば私も無事でいられるか……あなたがたまで巻き込むわけにはいきません。あとは頼みましたよ、アイオリア」

 にこりと微笑んでムウは告げると、そのまま、それをシオンに振り向けた。
 シオンは頷いてみせてから、童虎へと視線を向ける。

「童虎よ。つくづく面倒をかけるが、もうしばらく頼むぞ」
「損な役回りじゃな」

 短い言葉とともに、童虎は頷いた。そして。

「ミロよ、アフロディーテよ! お前たちだけを犠牲にはせぬ! この教皇シオンも共にゆくぞ……アテナの為に!!」

 気迫に満ちた叫びとともに、シオンが手を振り上げ、星屑の光を撃ち放った。

「スターダストレボリューション!!」

 それを合図に、ぎりぎりまで力を蓄えていたカミュとデスマスク、そしてシャカ、サガ、カノンが、その全力を開放する。

「くらいやがれっ! 積尸気冥界波!!」

「オーロラエクスキューション!!」

「我らと共に砕けよ、封印の壁! ―― アテナエクスクラメーション!!!」

 ――そして。



 「スカーレットニードル・アンタレス!!」



 真紅に輝くエネルギーの波濤が全てを飲み込み、渦を巻いて炸裂する中を、黄金の矢が貫いた。

 それと同時に、彼らを封じた石像のある聖域上空においてもまた、別の、神なるものと人の激突が生じ、図らずも両者の力が融合しあい、次元の壁を内外から引き裂き、打ち砕いたのである。

更新日:2012-07-05 17:31:54

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聖闘士星矢 黄金聖闘士復活篇~序奏~