• 15 / 22 ページ
 ミロとアフロディーテを一瞬早く引き止めたデスマスクは、シオンに視線を突き刺した。

「まったくムウの腹黒さなんざ、まだシオンの足元にも及ばねぇな。親羊と子羊の格の違いってやつか? ミロとアフロディーテを使って、ハーデスとポセイドンをお互いに噛み合せるとはな。どうしたって穏やかにご協力願える相手じゃねえ。どうせここまで読んでたんだろ教皇は」

 その追求に、シオンは、ふっと笑みを浮かべ、堂々と言い放つ。

「神の一手先を読んでこその教皇!」
「……誰だてめぇ!その台詞はシオンでもサガでもねえだろうが!!」
「お前こそらしくないではないか、デスマスクよ。ここでミロとアフロディーテを止めるとは、まるで別の蟹座だぞ」
「うるせぇな!! 別の蟹座知ってんのかよ!!」
「少なくとも、シオン様が前聖戦の生き残りである以上、当時の蟹座は知ってますよね」

 そこへさらに割り込んでムウが言った。ツッコミ合戦は羊師弟に軍配が上がったようである。

「そんなことより、私も、ここに至ってまで仲間同士の争いを見たくはありませんが……」
「……っておい、カミュ!?」
「――!?」

 不意に叫んだデスマスクに言葉を遮られたムウが振り返り、眼を見張った。
 いつの間にか強力な凍気を放ちながら、カミュが進み出る。

「カミュ、あなた……!」
「私もハーデスには貸しがある……それに、いざとなったらミロを止めろと、サガにも頼まれた」

 輝く氷の粒が作り出すリングが、幾重にもミロの姿を取り巻いていた。

「その氷の輪はカリツォー。次第に数を増やしていき捉えた者の動きを封じるとミロは知っているが……先程は良いことを聞かせていただいた、ハーデス。私の凍気が冥界のものと相性が良いと言うなら、貴方にも私の技が通じると言うことだ!」

 カミュは断言したが、万全の自信などあったはずがない。しかし。

「ミロ、私のカリツォーは、お前が一度受けた氷河のものより格段に上だぞ。あの時程度の力では決して破れん!」
「ふ……や、やれば、できるじゃないか……カミュ……」

 憑依したハーデスごと動きを封じられながら、ミロがかすかに微笑んで、頷いてみせる。

「……なるほど。一度受けたことのある技は」
「受け手のイメージが強固なら通じてしまいますからね。普通と逆に」
「ハーデスに普通に通じてミロに通じさせればそりゃ動けんわな。カミュ、頭まわるじゃねぇか」
「この三人、一体何を出し惜しみしてたんでしょうねぇ」

 そのようにデスマスクと言葉を交わしたムウは、表情を改めると、アフロディーテに向き直った。

「さて、アフロディーテ。それではあなたには、私のスターダストレボリューションが通じるはずです。うかつに動けばただではすみませんから、しっかりポセイドンを抑えておいてくださいね」
「……き、君にも、貸しにしておくぞ……ムウ、っ……」
「いいですとも。無事にことがすんだら、白羊宮まで取立てにいらしてください」
「お前の宮、黒羊宮に改名したほうがいいぞ」

 いっそ健気なほどにデスマスクが突っ込みつつ、自分の頭を掻きながら、ぼそりと言った。

「……ま、俺もいいこと聞いたけどよ」
「?」
「月の女神アルテミスが、アテナから地上の支配権を奪ったって? なら、俺たちを封印しているこの空間の支えも、ほとんどがアルテミス様のお力ってことだよな?」

 にやり、と不敵な笑みを浮かべて、彼は続けた。

「で、俺の星座は蟹座だ。支配星は月。どうりでさっき、積尸気冥界波が撃てたはずだ」
「……!!」
「いくら神様でもよ、ミロとアフロディーテに魂を捕縛されたままで俺の積尸気冥界波でぶっ飛ばされれば、かなり効くんじゃねぇか? 言っとくが、俺は殺ると言ったら殺るぜ。ミロもアフロディーテもそのへん、わかってるよな?」

 言いながら、デスマスクがゆっくりと積尸気冥界波の構えを取った。 

「な……っ」
「 ―― カミュ!力を緩めるな!!」

 デスマスクの宣言に、思わず怯んだカミュのカリツォーが解けかけるが、ミロ自身の叫びがそれを引き止める。

「……ミロ!」
「カミュ……お前や、サガたちばかりに……つらい思いをさせて、すまなかったな……」

 ミロは静かな微笑みをカミュに向け、目を閉じた。

「今度は……俺の番だ……お前たちを、星矢を……そしてアテナを救う道が、ひとつある」

 ほとんど封じられているはずの小宇宙 ――。
 それが力強く、黄金の輝きを放った。

更新日:2012-07-05 01:47:37

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

聖闘士星矢 黄金聖闘士復活篇~序奏~