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ライバル(奏太目線)


勉強も、スポーツも、
自分でも割と何でもできるほうだと思う。

別に、もの凄く努力しなくても、
幼稚園で九九が言えたし、駆けっこも一番だった。

「なんだ、割と簡単じゃん、つまんねーの」

ガキの頃はそんな風に思ってたから、

今思うと、シメてやりたいぐらい、
すげー生意気なヤツだったと思う。

そんな俺の前に央が現れたのは

小学校に入学して、
3カ月ぐらいすぎた時だった。

自信なさげに黒板の前に立つ転校生は、

東京のど真ん中から来ただけあって、

都会っぽい坊ちゃん坊ちゃんしい、雰囲気で、

とてもじゃないけど、

俺達と一緒に、
泥んこになって遊んだりするような

タイプには見えなかったんだ。

「なんか、ピアノ教室にいそうな、
もやしみたいなヤツ」

央の細長い指を見て、

深雪の通うピアノ教室を

思い出した後は、

すっかり央の存在は俺の中で
いないも同然だった。

央が来て、
1カ月ぐらい、たった頃から、

「ねぇ、ねぇ、転校生って
東京から来たんでしょ?
色々聞こうよ!」

なんて、深雪はうるさく言って、
しきりに俺と央を
しゃべらせようとしていた。

深雪と俺は家が隣り同士で、
生まれた時からの幼なじみ。

コイツの考えてることは
説明されなくても、
誰よりもよくわかる。

優等生でお利口な深雪は、
央が一人でぽつんとしているのが
気になってしょうがないんだ。

ガキ大将の俺が話かければ、

クラスの男子が我先にと央に
話しかけるはずで、

深雪はそれを期待してる。

面白くなくて、

「自分で話せよ」

そう言ったら、無言になって、
モジモジする。

「男の子だし、そんなの、無理だもん」

俺には強気のくせに、

それ以外には
びっくりするくらい弱気な深雪。

「そーゆーの内弁慶っていうんだぜ」

そう言ったら、意味がわかないのか、
キョトンとして、
でも、悪口を言われたのがわかったのか、

「奏の馬鹿っ!!」

いつもの決め台詞をいうと、
告げ口するため、

俺の家の方に走って行った。


なんでかな…

深雪はいつも自分の母親じゃなく、
俺のかーちゃんに泣きつきに行く。

かーちゃんはウチに女の子が
いないもんだから、
大歓迎で深雪のことを
猫っ可愛がりしてる。

深雪のせいで、
後で怒られるのは俺…。

こーいうところは
しっかりしてるんだ
深雪のヤツは…。

更新日:2012-06-27 10:11:43

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