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ただより高いものはない

田中は言い終えて、本を強く閉じた。そして佳苗に微笑みかける。

「面白い話だよねー、やっぱり読み返して記憶辿っていくと、本当に面白い。時々次元をワープしてギョウの世界に行くと、本当にグロいのよ。アイツ、人間食べる時、わざとグロく食べるし」

田中がケラケラ笑いながら言うので佳苗は少し恐くなった。まるで、本当にその場にいたかのようだ。

「なんかミエルが命を落とした意味がなくなったよ・・・。リーナ殺されちゃったし・・・」

「だよねー。ミエル、リーナのこと好きだったのに。呪いを掛けられたのはギョウだけだったんだから、ギョウを殺せば全てが終ったのにねー」

「でも、呪いをかけるお坊さんって存在するんだね」

「まあ、あっちの世界の人間はイカれているから」

田中がケラケラ笑った。こんな話を自分の記憶のように話している貴方もイカれていると思うけどな、と佳苗はうっすら思った。

「ちょっと、イカれてるって失礼ねー。神様なのよ!!」

田中は頬を膨らませ、佳苗を軽く睨んだ。心の中で思っていたことが当てられたので佳苗はびくっとした。勘がいい子なのかもしれない。

「・・・でもさ、神様なんでしょ?」

「ええ」

「何で、時、戻さなかったの?神様なんだから、出来るでしょ?それでギョウを、殺せば、いいんじゃないの?」

佳苗は途切れ途切れに言った。なんだか自分が田中が神様だと信じているような発言だったのでしたくなかったのだ。田中は細い足を抱えて、本の上で体育座りをして佳苗に微笑んだ。

「そうだったら、つまんないじゃん?誰もの人生が成功してたら人生じゃないよー」

「でもさ・・・「人生は地獄よりも地獄的である」

田中は短く言い放った。そして足を組んでにやりと笑った。

「これ、芥川龍之介の名言なんだー。結構気に入ってるんだよねー。だって事実でしょ?」

でしょ?と微笑みかけてくる田中に佳苗は頷くことが出来なかった。たしかにそうだ。だけど田中はまるで、人間の不幸を楽しんでいるかのようなのだ。

「ね、田中さんの記憶・・・まだある?」

「いっぱい。聞く?」

「うん」

「佳苗さ、ことわざの一つなんだけど、ただより高いものはないってことわざがあるって知ってる?」

田中に聞かれたので佳苗は首を振った。田中は立ち上がって、その場を歩き回りながら説明をした。

「ただのものには危険がある可能性があるよってこと。で、今から貧乏の人に起こったことを話すね」

更新日:2012-06-22 12:36:06

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真夜中の神様の図書館のことわざ集