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幸せな生活

とあるボロアパート。
婚姻届を出してから、彼らはここに住むことを決めた(その前の、音無が退院してから住んでいたが)。

二人が結婚した日は、元戦線メンバーが全員集合した。

「「「結婚、おめでとう〜〜〜っ!!」」」

パンパンッ!とクラッカーの音がして、それから拍手の嵐である。
岩沢は照れて、俯いてしまっている。
「結婚式はいつやるんですかっ?」
高松が挙手し、質問する。
「……金が貯まったら?」
音無が苦笑する。
こんなボロいアパートに住むくらいだ。
指輪のお金は出せても、それ以上のことは難しかった。
「子供はいつ作るんだ?」
日向がニヤニヤ笑いながら手を挙げる。
おぉ…っという声。
「いや、えっと…いずれ…かな?」
音無が照れながらも答えると、メンバーからヒューヒュー!という声、指笛。
完全に冷やかされている…というか玩具にされている。
「岩沢もなんか一言〜!」
ひさ子が笑いながら挙手。
指名された当の本人はただ俯いているだけだ。
「まさみ…いつまでも照れてないで、な?」
背中をポンポンと叩く。
それでようやく、岩沢は顔をあげた。
真っ赤だ。
「ほら岩沢言ってやれ!
音無と結婚した理由っ!」
ド直球な質問。
少しの静寂…。
岩沢の言葉を、いまかいまかと待つメンバー達。
そして、ついに岩沢が口を開いた。

「結弦が…好きだから」

それだけ呟くと、岩沢は俯いてしまった。
またも、冷やかしの歓声があがる。

「……さて、冷やかしはこの程度にするか。
二人に渡したい物があるんだ」

日向が直井とユイに紙袋を渡す。
それを音無と岩沢に手渡す。
「音無さん…おめでとうございます!
辛くなったらいつでも呼んで下さいね…」
直井が涙目になりながら紙袋を渡す。
「あはは……。
…というか、中身は日用品ばっかだな」
音無は苦笑いしながら中身を確認する。
マグカップに茶碗、箸…etc。
「……私の紙袋、デカすぎだろ」
岩沢の紙袋は、かなり縦長だ。
それ以前に、こんな紙袋は存在するのだろうか。
「……ギター」

岩沢が向こうの世界で使っていたのに、良く似ているフォルムのギターだった。
現実世界にアコギはあったが、エレキまでは持っていなかった。
「……みんな、ありがとう」
岩沢はそう呟き、そのギターをぎゅっ…と抱きしめた。

更新日:2012-06-28 14:22:28

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