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5 主題は怪談の方ではない感じですが

続いて、職場であった話……に入る前に、又聞きの話を1本いれておきたい。
つい最近、仕事とは全く関係のない方から聞いた話である。

その方の娘さんは、中学生のときに一時期すこし不登校ぎみになってしまったことがあるそうである。
理由は、学校にいる霊が見えてしまうため。

実は、そのために不登校になってしまった生徒さんの話を聞くのははじめてではない。
もうずいぶん前になるけど、大学時代の友人から、彼女のつとめていた学校にいた生徒で、校門の前にうずくまっている人物が見えてしまってどうしても登校できない子がいる、という話を聞いたことがあったのである。
なんとか引っぱって学校の前まで連れて来ても、校門を見るともう怖がって泣き喚いてしまうので、どうしても校内に入れることができなかったのだそうだ。

年代も地域も違うので、同じ生徒の話を別々に聞いたものである可能性はない。
私が聞いたことがあるだけでも、そういうものが見えてしまうために学校に行きづらくなった生徒が2人は存在する、ということになる。

最近聞いたほうの話の娘さんの場合、その学校の先生の中に全く同じものが見えている人がいたため、学校側に理解してもらえたのだそうである。
担任も、自分には見えないけど信じる、と言ってくれたそうで、娘さんは本格的に不登校になることなく無事に卒業したという。

人づてに聞いた話なので、娘さんの学校の先生が本当に彼女と同じものを見ていたのかどうかはわからない。
うがった見方をすれば、先生の中で一人話を合わせる係を決めて対応したという可能性も考えられなくはない。その辺は直接面識がない人のことで判断はつかない。
ただ、話を合わせているだけなら辻褄の合わないことも出てくる危険性があるし、そうでなくてもあまり込み入った小細工はしないのが普通なので、その先生が実際に同じものを見ていたと考える方が、ワタクシにとっては自然だ。

高校生になった娘さんは、今でもやっぱり普通の人には見えない存在が見えたりすることがあるらしいけど、もうそういうものを見ても無視するようにしているのだそうだ。
「もう慣れちゃった」のだそうで。

この場合、明暗を分けたのは保護者や学校の対応だろうな、と思う。
もしかすると、かなり前に聞いた話の方では「校門の前の人」がよほど恐ろしい人で、最近聞いた話の方に出てくる「霊」はそうでもなかった、ということだったのかもしれないが。

ただ。
件の大学時代の友人は、その生徒の言っていることをまるっきりウソだと思っているわけでもない感じではあった。虚言かもしれないし、なにか心の病で見えるのかもしれないし、実際に霊がいるのかもしれないし、どの可能性もある、というスタンスで語っていたように思う。
しかし、すくなくともその生徒を「校門のところまで引っぱって連れてきた」という人(親だったか先生だったか忘れた)に関して言えば、その生徒の言うことを信じていなかったのだろうと思う。

最近聞いたほうの話では、「同じものが見える」という先生がいたというのはものすごく大きかっただろうし、担任など他の先生の対応も適切だったと思う。
話してくれた人(娘さんのお母さん)も「娘にはそういうものが見えるんだなぁ」と普通に受けとめているようだった。

妙なモノが見えてしまうことに「慣れちゃった」と言えるようになったのは、なによりも本人の努力によるものなんだろうけど、アタマから否定せずに「信じる」という人が近くにいるというのも、人間が強くなるうえで非常に重要なことなんだと思う。

(2009.05.05 Tue)

更新日:2012-05-13 22:17:39

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