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NO.2 BENクー著 金環食 『新女王誕生』


ま、また天が食われた!」
1年前にも欠けた太陽が再び欠け始めると、人々の恐怖心は頂点に達した。

『再び天が消えるでしょう。ヒミ様が悲しんでいらっしゃるから…』
若巫女テヨの予言が現実になったのだ。

侵食する月が太陽に飲み込まれ、鮮やかな金環食を作り上げた時、先代女王ヒミの墓所たる天の岩戸に篭っていたテヨが声を上げた。
「さあ、ウズ様、今こそ天の声を聞く時です。タヂカ様、岩戸をお開け下さい」
降臨の巫女たるウズが踊るように憑依の祈りを始めると、タヂカが重い岩戸を力を込めて押し開いた。
岩戸が開くにつれ、ぼんやりとしていた外界が徐々に光に照らされていき、岩戸が完全に開かれた時、侵食から抜けた一条の光が岩戸の中に立つテヨの姿を眩しいほどに照らし出した。
テヨは、その予言の力を人々に見せつけたのである。

「天を消されてはこの国に我の生きる場はない…」
さすがに物怖じしないスサ王も、再び天を隠そうとするテヨの霊力にはただただ畏怖の念しか浮かんでこなかった。晴れの場たる日中を治めるスサにとって、天の光を消されることは自らの権力が行使できないことを意味したのだ。

この後、スサは新たな国を作るためにヤマト国を去り、推戴されたテヨが新女王となった。テヨは賭けに勝ったのだ。

予言や占術が国策に大きな影響を与えていた頃の物語である。

☆☆おしまい☆☆

更新日:2012-05-08 22:33:11

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