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幟季は琉斗と詩音を見送り、再びソファーに腰を掛けた。


「霧島 琉斗か。……あー、あー!詩音も琉斗くんもいなくなっちゃったから暇だなー!宮先生みたいな話し相手が欲しいなー!宮先生がいてくれたらなー!宮先生いないかなー!宮先せ……」


「はぁ……わざとらしい。気づいてたのね。」


扉からあきれた顔で宮が入ってきた。
幟季は満足気な顔をしている。


「あなたって抜けてるようで抜けてないのね。」


「ひどいなそれ……。いつから立ち聞きなんて趣味の悪いこと始めたの?だめだよーそういうことは。まぁ、座って下さいな。」


宮は幟季の向かい側の椅子に座った。
表情は真剣そのもの。
幟季も思わず苦笑いした。

「……似てるわね。琉斗だったかしら?顔は父に、性格は母にね。」


「似てるねー。ホント性格が"源治"からじゃなくてよかったよ。あの堅物頭を説得するのは至難の技だからね。でも"源治"に似てるってことは、僕とも必然的に似てるってこと?参っちゃうなー。」


いつも調子の幟季の性格にため息をつく宮。
ずれたメガネをクイッと戻すと再び鋭い眼差しを幟季に向けた。


「結局話さなかったわね。亡くなった彼の両親のこと。」


その言葉を聞いた幟季はピクッと反応し、一瞬表情を曇らせたが、すぐに笑顔を取り戻した。


「一気に話してもパンクしちゃうでしょ?それにこの話をすると琉斗くんも混乱しちゃうだろうから。特に"里穂さん"の話はね。」


「……確かに難しいわね。」


「そういうこと!しばらくしたらまた話す予定だよ。じゃ、お茶でも入れてこようかな。」


そう言って立ち上がり、部屋を出た幟季の背中はどこか寂しげに見える。

そんな幟季の様子を感じ取った宮は天井を見上げながらつぶやいた。


「ほんと、苦労の絶えない人……。」

更新日:2012-04-28 01:13:36

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