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人間が最善を尽くせば、他に何が必要だろう?

『ひどい目にあった』と言えばそれはもう単純明快だ。
酔っぱらいがキャバクラに誘われ法外な値段をふっかけられて身ぐるみ剥がされる並みに、下手をするとそれ以上にひどい目にあった。
いや、まだ、そっちのほうがマシだ。
最終的に、私は両手足が無くなり、両目も使えなかった上に、3時間以上も苦しんだ後に死んだ。

「頭痛い…」

あまりの凄惨な死に様に、現実に戻った今も、頭がグワングワンしている。

「まぁ、収穫あったし、其れなりに対価は払ったわよね!」

アイツ、小鳥遊夕は一回だけゲームを遣ってくれると約束した。
そして、今日そのゲームを渡すために、私の家に来る。
家というか、食堂だけど。
夕飯時を少し過ぎて来るとかで、8時ぐらいだろう。
そうなると、居酒屋のようになるので、これまた微妙だ。

「ちょっと、恵!
さっさと降りてきなさい!!」

下の方でお母さんの声がする。

「今行くわよ~!!」

午後6時。
私のアルバイトが始まったわけだ。
一階に降りると、サラリーマンやカップル等、様々な客層がテーブル席に座って食べていた。

「あんた、注文取って。
番号書き忘れないでよ」

お母さんがエプロンと銀のお盆、そして、メモ帳を私に押し付ける。

「はいはい」

新しく入ってきた客にいらっしゃいませと声をかけつつ、素早く人数分のコップと水を持って行く。
この食堂には50人入るが、ほぼ満席だ。
各々が自分の端末でテレビを見たり、いろいろとやっている。

「注文はお決まりでしょうか?」
「このおすすめ定食ってのを」
「はい、おすすめ定食ですね。
ほかには?」
「じゃあ、これ。
えっと、特製スタミナ牛丼?」
「はい、分かりました。
少々お待ちください」

メモに机の番号を書いて、注文を書く。
そして、それを厨房に持っていくのだが、まぁ、今のご時世、メモ帳で注文を取るのはこの店ぐらいだろう。
厨房に立つお父さんとおじいちゃんが『機械はわからん』と時代に真っ向から対立する言葉を言い放って、採用していないのだ。
まぁ、そう言う所もこの店が人気の一つなのだが…
私からしてみれば、いい迷惑だ。

更新日:2012-06-19 23:17:30

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ライプシュタンダーテ トーテンコップの男