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食事を終えた私達は、昼休みの終わりが近づく中、会社へと急いだ。
春を感じさせる暖かな南風がビルの隙間を加速しながら過ぎ去ろうとしたその瞬間、
「あっ」
と小さく叫ぶ声が聞こえた。色白のいかにもひ弱そうな男だった。
何やら落とし物を捜しているようだ。
キラリと光る小さな宝石のようなモノを大事そうにそっと拾い上げた男は、困った様子でそれを見つめていた。
どうやらコンタクトレンズのようだ。
「ちょっと貸してみて」
とっさに私はその男からコンタクトレンズを取り上げ、口に入れて舐めた。
あっけにとられている男に、
「ほら、ちょっとしゃがんで!」
私は背後から男を覗き込み、左手で瞼を押し広げ、右手中指の先に置いたコンタクトレンズを、男の瞳にそっと置いた。
男は何度も瞬きをしてから、
「ありがとうございます」
と笑った。
「いい!……これはあくまで応急処置なんだから、後でちゃんと洗うのよ!」
「じゃあね、草食君」
「あっあの~」
男は何か言いかけたが、私達は聞こえない振りをして、歩きながら後ろの男に手を振り、社屋へと入って行った。
いかにも頼りなさそうな男だったけど、ちゃんと洗浄したかな~。
春を感じさせる暖かな南風がビルの隙間を加速しながら過ぎ去ろうとしたその瞬間、
「あっ」
と小さく叫ぶ声が聞こえた。色白のいかにもひ弱そうな男だった。
何やら落とし物を捜しているようだ。
キラリと光る小さな宝石のようなモノを大事そうにそっと拾い上げた男は、困った様子でそれを見つめていた。
どうやらコンタクトレンズのようだ。
「ちょっと貸してみて」
とっさに私はその男からコンタクトレンズを取り上げ、口に入れて舐めた。
あっけにとられている男に、
「ほら、ちょっとしゃがんで!」
私は背後から男を覗き込み、左手で瞼を押し広げ、右手中指の先に置いたコンタクトレンズを、男の瞳にそっと置いた。
男は何度も瞬きをしてから、
「ありがとうございます」
と笑った。
「いい!……これはあくまで応急処置なんだから、後でちゃんと洗うのよ!」
「じゃあね、草食君」
「あっあの~」
男は何か言いかけたが、私達は聞こえない振りをして、歩きながら後ろの男に手を振り、社屋へと入って行った。
いかにも頼りなさそうな男だったけど、ちゃんと洗浄したかな~。
更新日:2012-03-31 13:07:02