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居場所


職場復帰の初目、新旧の部署へ挨拶に行った。

「いろいろとご心配をおかけしました。今後ともよろしくお願いします」
「5月22日付で総務課に配置換となりました相原です。どうぞよろしくお願いします」

自分ではそう言ったつもりだったが、呂律が回らない。

新しい上司は、
「自分の身体の事を一番に考えて! 仕事の事は心配いらないから」
と、優しい笑顔で言ってくれた。総務課長の大橋史郎だ。

私のために新しく用意されたポスト。
当然、前任者からの引き継ぎなどない。
何をすれば良いのか……とりあえずダンボールの荷物を机にしまった。

「ちょっと良いかな」
大橋課長から別室に促された。

「調子はどうですか?」
「今はまだ大丈夫です」
そう答えるしかなかった。

「仕事の件ですが……総務係のサポートをお願いします」
総務係とは総務課の中心的な部署で、仕事の内容も多岐にわたる事から、人数も一番多い部署だった。

「基本的には係長と連携してやって下さい。あまり無理をしないように。身体の事を第一に考えて」
そう言って私の肩をポンと叩いた。
セクハラ課長め、訴えてやる!

早速、総務係長と打ち合わせを行った。
うまく伝わらない時は、筆談を交えながら会話した。
当面は総務係の仕事のチェックを兼ねて、仕事を覚える事から始める事になった。

総務課は、会社全体の内容を把握するためにはもっとも適した部署である。
総務係はその中心的な部署だ。社員もそれなりの人間が配置されているようだ。
チェックと言っても実質的な仕事は無に等しかった。

舌の萎縮のせいか、発する言葉は理解されず、筆談で行う事が増えてきた。
いつの間にか私は透明人間のような存在になって行った。

昼食も汚い食べ方しか出来なくなって来たので、外食は控えコンビニ弁当で済ませるようになり、やがては朝夕の2食だけになった。

今まで一番楽しかったおしゃべりや食べる事が、今では一番のストレスになってしまった。


更新日:2012-03-31 13:21:42

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