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1話

窓の外では桜が風に吹かれ散っていた。
それはもうハラハラと、バラバラと。

サクラチル

受験シーズンの受験生に聞かせたら刺されても文句を言えないであろう言葉が、僕、月原空也(つきはら くうや)の頭に浮かんできた。

「えー、こうして皆さんも高校2年生になった訳ですから、
受験と言うものを視野に入れて、日々の授業に取り組んでいくことが―」
ぼーっと考え事をしていると、教壇に立つ担任教師の声が
聞こえてくる。

今は、高校2年の始業式が終わり、新しい教室、新しいクラスメイト、
新しい担任教師から、授業の年間計画の説明が行われていた。

一体、高校2年生になったばかりで、受験のことを真剣に考える生徒が
どれだけいるというのか。
少なくとも、僕は考えていないぞ。

……いや、いるか。それも僕の隣の席に。
僕は隣の席の女子生徒に目を向けた。

小春野雪乃(こはるのゆきの)

小春野は、担任の話に時折頷きながら、ノートに
何事かシャーペンを走らせていた。
表情も何やら「そうか、受験を意識していかないと」と
決意しているような気もする。

小春野は子どものころからの幼馴染で今でも
割と話すのだが、何でこんなに生真面目なんだろうと
時々不思議に思ったりもする。

視線に気づいたのか「何かな?」という顔で
小春野がこちらを見てきた。
特に用は無かったし、小春野の邪魔をするつもりもないので
何でもない、と手をひらひら振っておいた。

小春野は少しの間不思議そうにこちらを見ていたが、
結局何も言わず、また前を向き、ノートをとり始めた。


「おっほん、えー、ではここで」
担任教師が咳払いをして注目を集めた。
何だ、やっと退屈な話が終わるのか。

「転校生を紹介します」
終わらなかった。

転校生、転校生か。
と言うか、転校生の紹介、最初にやれよ。ずっと廊下に待たしてたのかよ。

他のクラスメイトも同じようなことを思ったようで
教室に入ってきた転校生に同情的な目が向けられ、
転校生が少し引いていた。


「父の仕事の都合でこちらに引っ越してきました、
甘露院ほたる(かんろいん ほたる)です。よろしくお願いします」

<続きます>

更新日:2012-03-23 00:19:08

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