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1話

昔,この国では鶴を助けると機織をしてもらえ,

亀を助けると竜宮城に連れて行かれたらしい。

また,現代では拾った犬が美少女になったり,

飼ってた猫が美少女になったりとまさしく猫も杓子も美少女になって愉しく暮らすらしい。

これらのことから,学び取れることは,ただ一つ。

困っているものを助けると良いことあるよ,ということ。

動物でこれなのだ。

それなら,動物よりももっと力のありそうな奴を助けたら,

どれほどの幸運が舞い込むのだろうか。

そう,例えば神様とか。



僕,茶乃間緑茶(ちゃのま りょくちゃ)はその日,ついてなかった。

まず,朝はセットしていた目覚まし時計が電池切れで止まっていて,

学校までの道のりで信号は全て赤。

結局遅刻した上に時間割を間違えていて課題を提出できず,

予習していないところを質問される。

気晴らしに本屋で大人向けの本を買おうとしたら年齢確認という拷問を受けた。

何だよ,良いじゃないか。高校生だぞ。買うっつんだよ。

そして,やっと家に帰ってきて玄関の鍵を開けようとしたら鍵が折れた。

呆然。何だ,世界は僕に対して死ねと言っているのか?

両親が帰ってくるのは夜になるし,それまでぶらぶらしとこうかな。

あー,ついてねーなー。



結局何をするでもなく夜までの時間を潰し,

家に電話するともう両親とも帰ってるようなので帰ることにした帰り道。

人が倒れていた。おいおい。酔っ払いか?

「大丈夫ですかー,おーい」

呼びかけてみるとわずかに反応があった。死んでるわけではないみたいだ。

周りに人が集まってきてこちらを見ている。

「あれ,なにかしら」

「酔っ払いでしょ,ホントやーねー」

「あら,いやだ。あっ,聞きました?この辺りで最近不審者が出るって話」

「怖いわー,襲われたらどうしましょ」

「ホントよねー」

はっはっはっはっは。

中年の奥様方が談笑している。



その声に反応したわけでもないだろうが,倒れてた人が起き上がった。

若い男だった。

周りの野次馬も今は黙ってこちらを見ている。

何となく僕が聞かないといけないような気がして

「どうしたんですか?」

と聞いてみた。

「こ,こっ」

ここ?何だ?

「こいつに襲われたー!!」

男が叫んだ。僕に集中する視線。聞こえてくるひそひそ声。

「まぁ,聞きました?あんな地味そうな子が……」

「相手は男なのに」

「そう言えば心が歪んでそうな顔をしてますわ」

「勝手なことばっか言ってんじゃねぇよ!!」

はっ,思わず言い返してしまった。

奥様方は一目散に逃げていった。変な噂が広がらないのを祈るばかりである。

あー,もう何なんだよ。今日は本当に。



<続きます>

更新日:2012-03-22 19:13:15

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