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2話

「これはこれは久しぶり,僕のことを覚えているかな」

また,ピエロと向かい合っていた。

「あれ,忘れちゃったのかな?まぁ良いよ」

このピエロは僕が反応しなくても勝手にしゃべり続けるようだ。

これはきっと夢だな。夢だと認識出来る夢とは夢の無い夢だ。

「意思疎通という概念はあるけど,本当にそれは実現可能だと

思うかい。例えば,言葉はコミュニケーションツールとして使用されているけど

正しく意味を伝えることが出来ているのかな。自分以外の存在と

いかなる形であってもつながりを持つことが本当に可能なのかな」

ピエロはぺらぺらとよくしゃべった。何故、こいつは

玉乗りもジャグリングもしないで話してばかりなんだろう。

「ほら,君だって……」

君だって,何なんだろう。僕に一体何があるっていうんだ。

どうでもいいことのはずなのに,その先は聞きたくない気がした。



目が覚めた。

周りを見渡す。幸いなことに幼馴染が窓ガラスを割っているという

エキサイティングな目覚めではなかった。さらに言えば,

ここは学校で,今は数学の授業が終わったところだ。

眠ってしまったのか。これも昨日小鞠さんに散々連れ歩かれたせいだ。

授業の半分くらいまでの記憶はあるから,そこまでは起きてたはずだけど

そこからの記憶はない。ノートにも記録はない。

なるほど,時間泥棒か。

少し困る。そろそろテストが近いし誰かにノート借りた方が良いかもしれないな。

と,視線を感じて横を見るとスージーさんがいた。

そう言えば今日も隣にいたなこの人。

スージーさんは無言でノートと消しゴムを突き出していた。

「……」

「……」

お互い無言である。何だ,この人。ノートと消しゴムで何を要求しているんだ。

って,あれ?この消しゴムは

「あぁ,これ昨日貸してた消しゴムだね。じゃあ返してもらうね。

それで,こっちのノートは?」

「……」

スージーさんは無言でノートを押し付けると立ち去っていった。

ちょっと扱いに困ったけど,ノートを開いてみると数学のノートだった。

どうやら,寝ていたのを見て,ノートを貸してくれるつもりらしい。

なぜ話したこともないのにノートを貸してくれるのか。

記憶を検索してみたが,思い当たるのは消しゴムのお礼くらいだった。

消しゴムを貸したくらいでお礼をするとは義理堅いことである。

ありがたいので借りておくことにする。



ノートをせっせと書き写していると最後のページにメモ用紙がはさんであった。

『高都廉次様 昼休み,屋上で待ってます スージー・B・キャンドル』

何だか,デジャビュとトラウマを刺激されるメモだった。

この時僕の頭の中にはいくつかの選択肢が思い浮かんだ。

→①屋上に行く

 ②無視する

 ③僕は高都廉次ではない

ここは①かな。せっかくノートを貸してくれたのに無視するのも気分が悪いしね。

しかし,何というか行動が読みにくい人ではある。

ノート貸してくれたり,呼び出したり,外国の人というのは

そういうものなのかな。

<続きます>

更新日:2012-03-22 18:59:40

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