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1話

ピエロのメイクをした男性が僕と向かい合っていた。そいつは楽しげに僕に話しかけてきた。

「君には死相が見えるね」

いきなり死亡フラグが立った。会話の滑り出しにしては最悪だ。

「失礼,君は死にそうに見えるね。いや,良い意味で」

言い直されてもフラグは折れなかった。そして,良い意味ではないと思う。

「それは置いといて,熱湯コマーシャルのお湯は本当に熱かったのかな?」

僕の生命が置いとかれた。話題の転換も脈絡不明だ。この人は会話が下手だと思う。

今まではピエロが話しかけてきたことで行動不能になっていたが,そろそろ言い返したくなった。

「あの,さっきから何を言ってるんですか」

「何って,そりゃ……」



ガシャーン!!

何かが割れる音がした。その瞬間目が覚めた。どうやら先程までの会話は夢だったようだ。死亡宣告されるとは嫌な夢を見た。

でもさっきの音は一体?



部屋を見渡すと窓ガラスが砕けて,幼馴染が立っていた。



おかしい,一行の文章の中におかしなところが二つもある。

「こんばんは!!」

幼馴染が叫んだ。一体,何なんだこの状況は?なぜガラスが割れているんだ?修理にいくらかかるんだ?って言うか,なぜこいつが僕の部屋にいるんだ?

「ちょっと廉次(れんじ)!!朝なのに『こんばんは』ってボケてるんだから,『今はおはようだろっ』てツッコミなさいよ!!せっかく窓を蹴破って入ってきたのに台無しじゃないっ!!」

人が混乱してるのに,ツッコミを要求された。しかも,かなりレベルの低いボケだ。わざわざボケるために窓ガラスを破壊したようだが,明らかにボケよりも窓ガラスが割れることの方がインパクトが強い。手段と目的が入れ替わるにも程がある。

「一体これはどういうことだっ,一体これはどういうことだー!」

大事なことなので二回言った。

「ツッコミが甘い!!」

ツッコミに駄目だしをされましたよ?

人の家の窓ガラスを割ったことに対して全く罪悪感を感じていないようだった。自分の行動理由を説明する気も無いようだ。

この奇怪な女は千代野千夜(ちよのちや)。僕の幼馴染だ。今も同じ高校に通い,しかもクラスメートだ。常にエクスクラメーションマーク(!マークのこと)を使って会話をする大変やかましい生き物である。意味不明,脈絡不明なのはいつものことなのでとりあえず奴は放置。急いで窓ガラスを始末する。千夜は手伝いもせずに僕のベッドに寝転んでいた。



「このままだと遅刻だぞ,廉次!!」

「誰のせいだと思ってんだ」

僕達は学校への道をダッシュしていた。僕,高都廉次(こうとれんじ)は一介の高校生なので遅刻等をして学校から目を付けられたくないのだ。それなのに……。

「おい,千代野軍曹。貴様なぜ窓ガラスを割って侵入した?」

「はっ,私昨晩『ターミネーター2』を観賞し,いたく気に入りまして,それを真似てみました!!」

軍隊風に聞いてみたら,あっさり理由を言った。ボケのレベルは最低だがノリは良い幼馴染である。ただ,『ターミネーター2』には窓を蹴破って浸入する場面は無いはずであり,ろくにテレビも観ずに脳内で補完しまくったことは明白である。



<続きます>

更新日:2012-03-22 18:53:34

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