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家族
“あなたはだぁれ?”
「……ん?」
未来が森にある小屋の中で目を覚ます。
「おや、目を覚ましたのか」
未来がぼけっとした表情できょろきょろとあたりを見回すと、声のした方向に遊輔がいた。
どうやら、ずっと見ていてくれたらしい。
「……ありがとう」
「いや、気にしないでもいい。しかし、女神の寝顔はなんと美しいことか。この俺はまだまだ修行が足りない。まさか女神を目の前に何も手を出せないなんて……こんなんじゃハーレム部の部長を名乗るには程遠い!」
「あはは……面白い人ですね」
未来がくすくす笑うと、遊輔が意外そうに未来を見つめる。
「……調子狂うな」
「えっ?」
「いつもドSな生徒会長とデレを覆い隠すための強すぎるツンを持つ妹に触れ合っていたせいか、微妙にずれた反応を返されるとな」
「ああ、そういうことでしたか」
未来がくすくすと笑うと、遊輔が不思議そうな表情を浮かべる。
「気にしなくていいですよ。ただ面白い人だなって思っただけですから」
はたから聞くと変態にしか聞こえない発言がただ面白いという、この女性はやはりあの化け物の娘なのか。
「さてと……女神様も目覚めたことだし、この森を探検するとしようか」
「それもそうですね。ここがどこなのか理解する必要もありますし」
未来がそう言いながらベッドから立ち上がる。
「じゃ、行くぞ。ところで、未来さんっていくつ?」
「18です」
「……俺よりも年上か」
「いくつですか?」
「17だ」
「そうだったの。ま、年上とか年下とかあまり気にしないわ。じゃ、行きましょうか」
未来が先に小屋から出て行くと、遊輔が困ったように頭を掻きながら出て行く。
「儀水鏡の占いとかできないのか?」
遊輔が尋ねると、未来が首を横に振る。
「あれはあくまで媒体があってできるものなのよ。私は家族の写真なんて持っていないから、探すに探せないし」
「じゃ、遊璃の写真でもう一度探すことはできないか?」
遊輔が未来に1枚の遊璃の写真を手渡す。
「これって……妹さんの入学式の時の写真ですか?」
「ああ、そうだ。あの時の遊璃ったらまるで俺に受け入れるための翼を生やすために努力しようとしている天使のように見えたからな」
「ふふ。本当に妹さんのことが大好きなのね」
「ああ、そうだ!」
遊輔が何のためらいもなく言うと、未来はこくりと頷く。
「私にも大事な双子の弟がいるの」
「ああ、確か桐谷っていう」
男にはさして興味がない遊輔が適当に答える。
「私、桐谷に自慢できるような姉になりたいの。遊輔さんはいつも面白いことを言っているけど、それら全て妹さんのための言葉。私は面白いことなんて言えないから、いつも桐谷とは当たり障りもない会話しかできないのよ」
「そうなのか? 女神がいるんだから桐谷って奴、幸せだろうに。少なくとも俺だったら女神様が姉だったら全力で家族のスキンシップを取るけどな」
「んー、そういうのとはちょっと違うのよね。桐谷、いつも私に対抗心ばっかり持っていて、素直に憧れてくれたことなんてないの」
「俺だったら全力で女神様の弟になれたことを喜びますよ」
遊輔が未来の手を握ると、未来はふふっと笑う。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私もあまり素直になれなくてね。姉だということでいつも弟に情けない姿なんて見せられないから、いつも強がった、クールな姿しか見せられないのよ」
「俺はいつだって遊璃に素をさらけ出しているけど?」
「……とりあえず、おどけた態度を見せるのをやめてみたらどうでしょうか?」
未来がぽつりと呟くと、遊輔は真面目な表情を浮かべる。
「私のことを女神と言ってくれるのもそれはそれで本心だと思うんですけど……そうやって本心を覆い隠すあなたの態度があるからこそ、妹さんはあまり心を開かないんじゃないでしょうか?」
「そうかもな。だけど、あの世界の秘密は……」
「遊輔さんも何かしら大変な事情があるんですね。ま、少なくとも妹さんは私の目の前にいないんです。だから、本心をさらけ出してもいいわ」
未来がそういうと、遊輔が真面目な表情になる。
「ま、今は大事な遊璃のことだけが心配だからな……それに、俺達の世界に傷をつけてくれた連中も気に入らない。正直に言えば、怒りではらわたが煮えくりかえりそうだ」
「私もよ。大事な家族をおびき寄せていっきにばらばらにされて……家族の絆を馬鹿にしているんでしょうか、今回の件の犯人は」
「そうかもな。とにかく、俺たちをコケにしてくれたことはきっちりと始末させてもらわないとな」
「ええ、そうね」
未来がきりっとした表情でそう言うと、くぅ~と可愛らしいお腹の音がなる。
「……ん?」
未来が森にある小屋の中で目を覚ます。
「おや、目を覚ましたのか」
未来がぼけっとした表情できょろきょろとあたりを見回すと、声のした方向に遊輔がいた。
どうやら、ずっと見ていてくれたらしい。
「……ありがとう」
「いや、気にしないでもいい。しかし、女神の寝顔はなんと美しいことか。この俺はまだまだ修行が足りない。まさか女神を目の前に何も手を出せないなんて……こんなんじゃハーレム部の部長を名乗るには程遠い!」
「あはは……面白い人ですね」
未来がくすくす笑うと、遊輔が意外そうに未来を見つめる。
「……調子狂うな」
「えっ?」
「いつもドSな生徒会長とデレを覆い隠すための強すぎるツンを持つ妹に触れ合っていたせいか、微妙にずれた反応を返されるとな」
「ああ、そういうことでしたか」
未来がくすくすと笑うと、遊輔が不思議そうな表情を浮かべる。
「気にしなくていいですよ。ただ面白い人だなって思っただけですから」
はたから聞くと変態にしか聞こえない発言がただ面白いという、この女性はやはりあの化け物の娘なのか。
「さてと……女神様も目覚めたことだし、この森を探検するとしようか」
「それもそうですね。ここがどこなのか理解する必要もありますし」
未来がそう言いながらベッドから立ち上がる。
「じゃ、行くぞ。ところで、未来さんっていくつ?」
「18です」
「……俺よりも年上か」
「いくつですか?」
「17だ」
「そうだったの。ま、年上とか年下とかあまり気にしないわ。じゃ、行きましょうか」
未来が先に小屋から出て行くと、遊輔が困ったように頭を掻きながら出て行く。
「儀水鏡の占いとかできないのか?」
遊輔が尋ねると、未来が首を横に振る。
「あれはあくまで媒体があってできるものなのよ。私は家族の写真なんて持っていないから、探すに探せないし」
「じゃ、遊璃の写真でもう一度探すことはできないか?」
遊輔が未来に1枚の遊璃の写真を手渡す。
「これって……妹さんの入学式の時の写真ですか?」
「ああ、そうだ。あの時の遊璃ったらまるで俺に受け入れるための翼を生やすために努力しようとしている天使のように見えたからな」
「ふふ。本当に妹さんのことが大好きなのね」
「ああ、そうだ!」
遊輔が何のためらいもなく言うと、未来はこくりと頷く。
「私にも大事な双子の弟がいるの」
「ああ、確か桐谷っていう」
男にはさして興味がない遊輔が適当に答える。
「私、桐谷に自慢できるような姉になりたいの。遊輔さんはいつも面白いことを言っているけど、それら全て妹さんのための言葉。私は面白いことなんて言えないから、いつも桐谷とは当たり障りもない会話しかできないのよ」
「そうなのか? 女神がいるんだから桐谷って奴、幸せだろうに。少なくとも俺だったら女神様が姉だったら全力で家族のスキンシップを取るけどな」
「んー、そういうのとはちょっと違うのよね。桐谷、いつも私に対抗心ばっかり持っていて、素直に憧れてくれたことなんてないの」
「俺だったら全力で女神様の弟になれたことを喜びますよ」
遊輔が未来の手を握ると、未来はふふっと笑う。
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、私もあまり素直になれなくてね。姉だということでいつも弟に情けない姿なんて見せられないから、いつも強がった、クールな姿しか見せられないのよ」
「俺はいつだって遊璃に素をさらけ出しているけど?」
「……とりあえず、おどけた態度を見せるのをやめてみたらどうでしょうか?」
未来がぽつりと呟くと、遊輔は真面目な表情を浮かべる。
「私のことを女神と言ってくれるのもそれはそれで本心だと思うんですけど……そうやって本心を覆い隠すあなたの態度があるからこそ、妹さんはあまり心を開かないんじゃないでしょうか?」
「そうかもな。だけど、あの世界の秘密は……」
「遊輔さんも何かしら大変な事情があるんですね。ま、少なくとも妹さんは私の目の前にいないんです。だから、本心をさらけ出してもいいわ」
未来がそういうと、遊輔が真面目な表情になる。
「ま、今は大事な遊璃のことだけが心配だからな……それに、俺達の世界に傷をつけてくれた連中も気に入らない。正直に言えば、怒りではらわたが煮えくりかえりそうだ」
「私もよ。大事な家族をおびき寄せていっきにばらばらにされて……家族の絆を馬鹿にしているんでしょうか、今回の件の犯人は」
「そうかもな。とにかく、俺たちをコケにしてくれたことはきっちりと始末させてもらわないとな」
「ええ、そうね」
未来がきりっとした表情でそう言うと、くぅ~と可愛らしいお腹の音がなる。
更新日:2012-03-21 00:20:24