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失園

「おっ、流れ星」

赤也と城木が空を見上げると、夜の空に星が輝いていた。
歩き始めて約30分。
もともと夕暮れが近づいてきていたのに、すでに夜になっており、2人と一匹はため息をつく。

「とりあえず、宿を探すか」

「そうですね」

「ところで……お金はあるか?」

赤也が尋ねると、城木が少しばかり顔を曇らせる。

「……2000円」

「これまた微妙な……さっきのリンゴとか買ったお金でもう800円ぐらいしかないぞ」

「ま、まだないよりはましですよ」

2人がそう言いながら笑うが、その笑みも徐々に曇って行く。
常識的に考えて、2800円で2人がまともな宿屋に泊るのははっきりいって不可能である。
となると、残されているのは。

「野宿しかないかな……やっぱり」

「……ですよね」

(むぅ……ま、いいか。赤也と一緒なら別に構わないよ)

「それにレッドドラは炎の竜の精霊だからか、少しはぬくいしな。抱いて寝れば暖かいだろ」

(僕は少し暑苦しいけどね……ま、いいか。とりあえず、野宿に最適な場所を探そうか)

そう言いながら2人が歩いて行ったころ……


「あなたですか、街で情報を聞きまわっている不審者というのは」

鎧に身を包んだ警備隊がそういうと、瑠衣があからさまに不機嫌そうな表情を浮かべる。

「だったら何よ? あなたたちは私の大事な家族のことを知っているって言うの?」

「いや、知らない。だが、つい最近捕らえた人形姫とこの国の王子の結婚式も近い今、あなたのような女性といえども、暴れまわられるのはしゃれにならないからな。捕えさせてもらうぞ」

「できるものならご勝手に!」

瑠衣がそう言いながら鎧の男に蹴りを喰らわせるが、相手はさすがというべきか、並大抵の武術を交わすほどの腕があった。

「ちっ、さすがに数が多すぎるわね。紅桜!」

彼女の信頼する精霊が鎧の兵士に切りかかり、ここで初めて兵士たちがひるむ。

「なっ、なんだ!?」

「化け物か!?」

(いきなりその言われ用は酷いですが……私たちとてなりふり構ってはいられませんからね)

「そのとおりね。さ、教えなさい。璃衣と岳はどこ?」

「ふん、教える義務は」

男が教える義務はないと言おうとした瞬間、瑠衣の蹴りが鎧をかいくぐり、頚椎に見事にヒットし、男は気絶する。

「チッ、やわな男ね……で、知っている人はいないの!」

瑠衣が男を見まわしながら言うと、紅桜がいきなり慌てた表情を浮かべる。

(後ろ!)

「はは、油断したなぁ!」

先ほど最初に気絶させた兵士がいつのまにか瑠衣の背後から剣を振り下ろしていた。

更新日:2012-03-19 00:14:55

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