- 17 / 31 ページ
きいっちゃん
その一方で、朱鷺さんがいなくなったことをそんなふうに乗り越えられなかったのは、センセイの奥さんと、きいっちゃんなんだ。
朱鷺さんがこの世に残したたったひとりの娘である奥さんは、おかあさんをなくしたわけだし、それはものすごし悲しいことで、無理もないことなんだ。
しかも奥さんの場合は、反対されながらも自分がセンセイと結婚して、家を出たことで朱鷺さんを寂しがらせてしまって、それが原因で朱鷺さんのこころの具合が悪くなったって思ってるから、気持ちがしんどいんだよ。
じいさんがさ、優秀な警察官で、仕事をがんばればがんばるほど、家にいる時間がなくなってきて、朱鷺さんはさびしかったからさ、ひとりむすめに愛情を注いだんだろうと思う。
オイラも経験したけど、朱鷺さんの愛し方ってさ、すごく相手のことを大切にして、あれこれ心を砕いて、尽くすって感じなんだ。
でもそれは、どっかで、相手を自分のふところなかに閉じ込めて独り占めしたいって気持ちの裏返しみたいな感じにかわっていくんだ。で、一回でもそう感じてしまうと、朱鷺さんのすべてがものすごく息苦しくなってしまうんだ。
空気がうすくなるんじゃなくて、濃くなりすぎちゃうんだ。胸の中に重たい空気がいっぱいになってしまうんだ。
だから窓をあけたり、散歩にいったり、引っ越したくなってしまうんだろうなって思う。
つまり朱鷺さんの愛し方が相手を疲れさせてしまうんだ。
オイラは犬だからさ、どこかでしらんぷりできるけど、奥さんはひとりむすめだしさ、きっといっつもそんな愛情に振り回されてきたわけだからさ、そりゃあいろいろ葛藤があったと思うさ。だからどうしても家をでたかったんだろうな。
でもこんなふうに朱鷺さんが逝ってしまうと、それまでの自分がしてきたことが、果たしてそれでよかったのかなって思いはじめるんだよな。自分が選んだ道に疑問をもちはじめるんだ。
それはつらいことだよ。
まっすぐな道を歩くのは、いくら遠くてもこれが最善なんだって信じてるからさ、いくら遠くても歩き続けることができるんだ。
でも迷い道はそうはいかない。そのロスが多さも堪えるけど、この道でいいのかどうかわからなくなってしまうと、次の一歩をふみだせなくなってしまうんだよ。
奥さんの表情の晴れない日が続いたんだ。
朱鷺さんがこの世に残したたったひとりの娘である奥さんは、おかあさんをなくしたわけだし、それはものすごし悲しいことで、無理もないことなんだ。
しかも奥さんの場合は、反対されながらも自分がセンセイと結婚して、家を出たことで朱鷺さんを寂しがらせてしまって、それが原因で朱鷺さんのこころの具合が悪くなったって思ってるから、気持ちがしんどいんだよ。
じいさんがさ、優秀な警察官で、仕事をがんばればがんばるほど、家にいる時間がなくなってきて、朱鷺さんはさびしかったからさ、ひとりむすめに愛情を注いだんだろうと思う。
オイラも経験したけど、朱鷺さんの愛し方ってさ、すごく相手のことを大切にして、あれこれ心を砕いて、尽くすって感じなんだ。
でもそれは、どっかで、相手を自分のふところなかに閉じ込めて独り占めしたいって気持ちの裏返しみたいな感じにかわっていくんだ。で、一回でもそう感じてしまうと、朱鷺さんのすべてがものすごく息苦しくなってしまうんだ。
空気がうすくなるんじゃなくて、濃くなりすぎちゃうんだ。胸の中に重たい空気がいっぱいになってしまうんだ。
だから窓をあけたり、散歩にいったり、引っ越したくなってしまうんだろうなって思う。
つまり朱鷺さんの愛し方が相手を疲れさせてしまうんだ。
オイラは犬だからさ、どこかでしらんぷりできるけど、奥さんはひとりむすめだしさ、きっといっつもそんな愛情に振り回されてきたわけだからさ、そりゃあいろいろ葛藤があったと思うさ。だからどうしても家をでたかったんだろうな。
でもこんなふうに朱鷺さんが逝ってしまうと、それまでの自分がしてきたことが、果たしてそれでよかったのかなって思いはじめるんだよな。自分が選んだ道に疑問をもちはじめるんだ。
それはつらいことだよ。
まっすぐな道を歩くのは、いくら遠くてもこれが最善なんだって信じてるからさ、いくら遠くても歩き続けることができるんだ。
でも迷い道はそうはいかない。そのロスが多さも堪えるけど、この道でいいのかどうかわからなくなってしまうと、次の一歩をふみだせなくなってしまうんだよ。
奥さんの表情の晴れない日が続いたんだ。
更新日:2009-01-18 16:51:23