• 9 / 14 ページ

廃墟都市

 スーパー・ハイウェイの出口が、ネオ・トーキョーの入口だ。
 入ったとたん、そこはネオ・トーキョーのど真ん中だ。
 壁の色が暗赤色の大きな廃駅や、ガラス窓がすべて吹きとんだ跡が横穴式住居のように見える巨大な廃ビル群。
 白い壁や金の装飾が、穢された聖なる衣装のように、惨めに汚れて破れた宮殿。
 煤で真っ黒になった荘厳な古代の神殿のような石造りの建物。
 空堀にそびえる石垣の上の台地に、溢れるばかりに樹木が生い茂って原生林のようになった城跡。
 広大な車幅の道路を行くと、トラックのウィンドーに、次々とそれら建築物が迫ってくる。
 建築物は大きく破壊されてはいないが、どれもが見るからに廃墟だ。
 広大な車幅の道路を脇道にそれようとすると、その脇道の入口にはバリケードが構築されていて、車両は通行できない。
 だから車両は、ただひたすら広大な車幅のメインストリートを走るしかない。
 そしてメインストリートを走っているうちに車両は、ネオ・トーキョーの中心からどんどん離れて行ってしまう。
 結局再び別のスーパー・ハイウェイに乗せられて、別のエリアへ向かわざるを得なくなる。
 いったい何故そんな事になるのか?
 それは、ネオ・トーキョーの中心といえるこの場所から、直接ネオ・トーキョー各地へ車両で向かうことを阻止しようとする、何者かの意図によってバリケードが構築されているからだった。
 ミッキーはモンスター・トラックを、広大な車幅の道路のめいっぱい左側に止めた。
 ちょうどそこは、どこかへ通ずる脇道の入口辺りで、やはりバリケートが構築されている。車両は通ることはできないが、人が歩いてそのバリケードをすり抜けるスペースは造られていた。
 バリケードを抜けて、二百メートル先には、廃線となった地下鉄駅の入口がある。
 そこがネオ・トーキョーの各地へ徒歩で向かう、地下通路の入口だった。
 ミッキーは、シーコと猫のトト丸をトラックから降ろし、トラックに鍵をかけると、地下通路の入口までシーコを送って行くことにした。

更新日:2012-06-14 21:44:38

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook