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溜息と白い迷宮

瑠璃拿裕樹。
それが少年の名前だ。
日本の将来を担う会社に勤める、日本の将来を担う父を持ち、彼自身も沢山の期待とそれ以上の大人たちからの欲を背負って生きている。
彼は日本のため、という名目で、イツミアル、という自然豊かな神秘の国に一人送られた。
世界中の、大人の希望を背負った少年少女の集う、偉大なるアクリスタ学園に、今日から通うのだ。というか、今日から生活の拠点はこの学園だ。
裕樹はぽうっと溜息をついた。
今、これから暮らすこととなった自室を見てきたところだ。
白を基調とした、6畳ほどの洋室。
部屋には、デスクセットと、ベッドと、ランプ、タンス、日本から郵送した大きなバッグと、先ほどまで誰かに盗られやしないかと一人で勝手にひやひやしながら持っていたスーツケースのみ。
綺麗好き...というか、普段からピッカピカに磨かれた家で暮らさざる負えなかった裕樹にとっては、いい塩梅だった。
つい一時間前くらいに終わった入学式では、周りの生徒の気品に驚いた。
しかし、今いる教室内では、なんだかみんなだらけている。
早速、自己紹介をしている者もあり、日本の学校の新学期と打って変わらなかった。
裕樹は一人、自分の席に座り、窓の外を眺めていた。




更新日:2012-03-08 18:51:06

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アクリスタ学園の奇怪な友人Ⅰ