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第二章、奇跡2

聡は何気にふぅ~と、起き上がった。
 
その瞬間、周りが静まる。そして母親の桂子

「聡..、あんた十日も意識が無かったんだよ」。母親の佳子が聡の両肩を、両手で押さえ、

「もう..意識が戻らないんじゃないかって、諦めかけてたんだよ..」。

母親は涙ながら聡に言い告げる。
 
その時いきなり何処からか、(何だよ..ちっぇ..) そんな声が脳裏に走る。
 
それは明らかに同じクラスの、斎藤茂の声であった。
 
ふとこの病室の窓際に居る、斉藤を見つけた。
 
斉藤は、何気に病室の窓の外を、眺めていた。
 
その時、彼女の白畑恵美の声が脳裏に走る。

(聡君、もうだめ..)

目の前にいた恵美の方に顔を向けると、恵美は聡の脳裏に走った言葉を口にする。
 
「聡君もう、だめかと思った..」。
 
その瞬間!複数の声が脳裏を走る、だが周りは誰も口を動かしている様子は無かった。

(良ったぁ~これで親御さん、関係者達にも面目が立つ..は~..)。

担任の吉岡政治が口を動かさず、ただため息だけが目に入る。
 
そして聡が初めてここで、言葉を発っする、「浩次..死んだのか...」
 
辺りが又、静まり返る。
 
皆な、聡のその言葉に呆然とする。
 
母親の佳子が、「あ..あんたし…知っていたの..」。
 
聡は徐に「別に...そんな気がして..」。
 
また誰も口を動かしてはいないのに、ざわめきだけが脳裏を走るので有った。
 
そしてこの事態を、生徒の一人が看護婦に報告しに、ナースステーションに駆けつけた。

看護婦達は驚き、慌ててどの医師に連絡するか相談していた。

婦長が脳内科担当の石川隆を、内線電話で呼び出すと、看護婦と担当の医師が、

聡の病室に駆けつけて来た。

医師としては、当然の言葉を、聡は脳裏に感じ取る。

(気分は、どう....)遅れて医師の口が動く、石川「気分は、どうかな?」。
 
聡は医師の問いかけに、ただ俯いているだけである。

そして医師は、問いかけに無反応な聡はを見て、右手の人差し指を唇に付け、

左手を胸に添えて考えていた。

周りに居た皆なはその聡の表情を、心配そうに見つめている。

その時母親が、「あ..あのー、さっき私達と少し話をしたんですが..」。

医師は黙ったまま、しゃがんで聡の表情を伺った。
 
すると聡はそっと医師に顔を向けて、「二人だけで話がしたいんだ..先生と..」。

そう答えると、担当の石川医師は自分の顔を指し、周りを見渡した。
 
石川が、「すみません、ちょっといいですか..」、

周りの人達に告げると、両親、担任、同級生達が顔を見合わせ、

静かにこの病室から立ち去って行った。

そして、医師は聡に今の状態を尋ねる。

「どう..頭痛..吐き気は無いかな..」。
 
聡は、下を向きながら「何処も痛い所は有りません..」、ぼそっと呟いた。
 

更新日:2012-02-29 20:33:23

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