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運命を変えた1通の手紙


その日、俺は自宅にいた。

学校から帰った後で、服を着替えて2階から1、2段降りている時に、丁度、目の前の玄関の郵便受けから『カッコン』と郵送物が投函された音がして、原付きバイクの走り去る音がした。

何気なく、覗き、2〜3枚の郵便物を手にした。

その中の1通は『真っ黄色』の封筒で、宛名が俺になっていた。

『んっ?…何だろう…』

手紙の裏面を見ると、差出人の場所には『株式会社ジャニーズ事務所』となっている。

『!はっ?!!』

他の郵便物を玄関の棚に放り投げ、急いで2階の自分の部屋に戻り、ハサミを使って丁寧に開封をした。

中から三つ折りにされた、1枚の手紙が出てきた。

広げて見るとそこには…

『ヨッちゃんバンド、メンバー募集!』

と印字された文字が飛び込んできた。


『ヨッちゃんこと、野村義男がバンドのメンバーを大募集しています。』

と、あり『オーディションを行います』と印字されていた。


場所は赤坂TBSホール、そして時間などが記されていた。


『……オーディション。』
もちろん、生まれてこのかた、オーディションなど受けた事はない。


一体何で送られて来たのだろうか…?。


この時はまるで見当がつかなかった。


『ジャニーズ事務所のオーディション!?』

受けるべきか、それとも…。

書面には『得意な楽器の腕を思う存分、披露して下さい。』とあった。


とりあえず、ギターは弾けるが、ストロークが出来る程度である。

自分で弾き語りをするなら、良いが、『バックバンド』が出来る程、演奏の技術は持ち合わせていない。

アルバイトをして購入した『モーリス』のフォークギターと『グレコのジェフベックモデル』と言うエレキギターを持ってはいたが、もっぱら、『ゴダイゴ』の『galaxy express 999』をストロークで弾いて、歌っていたぐらいだ。


今は部屋の片隅で埃を被っている。


夜になり、彼女に電話をしてみる。


2回コールして、電話を切る。

直ぐに同じ『ダイアル』をかけ直す。

これが『俺から』の電話の合図だった。

昔ながらの『黒電話』で『リダイアル』なんて機能は持ち合わせていない。

2回鳴らして切ると次のコールの2回目には彼女が出る。

『もしもし!』

案の定、彼女が出た。
いつものように、明るく、弾むような、それでいてちょっとハスキーな声だ。


『俺だけど…実はさぁ…ちょっと話しがあって…』

と、唐突に『例の件』を話し始めた。

自分では『クール』に、どうしようか?悩んでいたつもりだった。

しかし、浮かれていたのは俺の方で、彼女は冷静だった。

『あなたはどうしたいの?』

と、聞いてきた。

『駄目もとで受けてみようかな…と思ってる。』

『じゃあ、答えは出てるじゃん。』

やや冷めたように間をおいて、答えた。


『そっか…』

『受かろうと受かるまいと、やれるだけやれば、後悔しないでしょ。』

と、優しい声が受話器の向こう側から聞こえた。

彼女の言う通りだった。

礼を言い電話を切った。

あれこれ考えても始まらない。

オーディションに行く事にした。

更新日:2012-02-25 15:40:45

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【あの頃のジャニーズ】 ~夢と彼女とジャニーズと ~