• 1 / 3 ページ

現代恋歌

「ピーナッツご飯はとっても簡単。といだお米に昆布、干しエビ、にんじん、ピーナッツ、豚肉を入れて炊くの。豚肉は角煮だとなおいいわ。調味料は塩と醤油とお酒。材料入れて炊くだけだかららくちんでしょ」

「簡単ね。主人が好きそう。お菓子だけじゃなくて料理も上手なんて羨ましいわ。わたしはどっちもダメ。料理上手になるにはどうしたらいいの?」

「好きこそものの上手なれ、よ。いっておくけど、料理上手ではないわ。人並みよ。ただキッチンに立って、さあ何作ろうかって考えるのが楽しいの。自分の食べたいものが、自分で作れるのってわくわくしない?」

「好きなものを一品だけ作るならね。何品も作らなくちゃいけないとなると、義務としか思えないの。とろいから、一度に二品も三品も作れないし。残り物を使わなきゃとか、栄養とか考えていると頭が混乱しちゃって。お菓子の方が好きだわ」

「無理していくつも作る必要はないと思うけど。あなたはきっと、そうは思わないでしょうね。カレーとか煮物とか、おかずなら何でも冷凍しておけばいいのよ。それにおみそ汁にご飯、何か一品作れば十分じゃない」

「手を抜きたくないの。主人はがんばって一日働いてるんだもの。家事ぐらいしっかりやらなきゃ、申し訳ない気がして」

「主婦の鏡ね。でもそういう考えの人は結構いるのよね。気が咎めるのなら子供が産まれるまでだけでも働いてみたら?ご主人が反対する?」

「いいえ。子供が産まれても働いていいって言っていた人よ。わたしの気持ちを尊重してくれる。働きたい気持ちもあるけど、子供ができたらやめるつもりなのに仕事を探すなんてできない。雇ってくれた人に失礼だもの」

「それはそうね。だいたい今の世情じゃいい仕事はないでしょうしね。ところで前に教えたくるみのタルトは作ってみた?」

「おととい作ったわ。思っていたより簡単だった。でも生地が焼くとき落ちてしまったの。フードプロセッサーで混ぜすぎたのかしら?」

「冷水を入れすぎたか、冷やす時間が短かったからだと思うわ。季節や気温によって調節するの。何回か作れば、分かるようになると思うけど。おいしかったでしょ?」

「ええ。主人はとても喜んでいたわ。形は崩れたけど、味はいいって。くるみとかナッツ類が大好きなのよ」

「それはいいわ。高栄養食だもの。あなたの率直な感想は?レシピをもっと改善したいの」

「失敗したから参考になるか分からないけど、タルト生地はおいしかったわ。一昨日より昨日の方が、さくさくしすぎないでおいしかった。実を言うと、ナッツはあまり好きじゃないのよ。今度チーズタルトを教えてくれる?」

「好きじゃないのに作ったの?夫がナッツ好きだから?」

「好きじゃないけど、好きになろうとは思っているわ。主人がおいしい、おいしいって食べているのを見ると、おいしく思えるのよ」

更新日:2012-02-23 22:19:21

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook