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第三章 花火3

オリジナル:http://blogs.yahoo.co.jp/kome125


得意先の小売業者にて二人は、店主にお客の評価を聞いていた。


店主は首を傾げ、「さあ、サービスで100本お得意さんに配ったけど、評価はイマイチだね。


この頃若い女性も男性並みに呑むから、あのビールは甘さが決めてだと、


辛口のお客には評価は低いよ」と、煮え切らなかった。


近藤は腕を組んで、「そうですよね、我々研究者も御当地ビールをベースに、


地ビール的種類を沢山出したのですが、発泡酒位の軽やかさが、


ユーザーにとっては限界の甘さなんですよね」と、悩んだ。


利奈、「私達女性の口当たりに優しいと、考案して出した種類は、


一時は受け入れられましたが、人気低迷です」と、肩を落とした。


店主も腕を組んで、「甘いビールは美味いけど、値段がね」と、首を傾げた。


近藤、「何でもこの不景気で、質寄り量ですからね」と、やはり首を傾げた。


利奈はその意見を、ノートに記載していた。


利奈、「それで多くの評価で、特徴としてはどうですか」と、店主に尋ねると、


店主は、「どうと言われてもね、色々だね」と、答える要素を失っていた。


そこはベテランの近藤が、聞き方を変えた、


近藤、「つまり多くのユーザーは、ジュースとビールの違いを求めている。


つまり甘いとビールでは無く、カクテルと言う認識が強くなる」。


店主、「そうなんだよ、そう言う見方だ」と、


店主の煮え切らない要素を、明確に引き出した。


近藤、「景気が悪くなればなる程ユーザーは、はっきりした味を求めて来る。


ビールなら辛く、発泡酒なら軽く甘く感じる。


その二種類が好まれてしまう」と、答えを明確に判断した。


店主は唸り、「んー、確かにそうかも知れないね。


景気がいい時は、個人の居酒屋から、10種類位のビールの注文が有ったが、


この頃では、高いか安いかの選択しか、して来なくなったよ」。


その店主の答えに、途方に暮れる近藤と利奈であった。


店を出て、車に戻り一路次の得意先に向かった。


利奈、「そう言えば、昨日隅田川の花火大会でも、


花火を見ていた大人達が、飲んでいたビールの多くは、


二つの種類、或いは二つのビール会社しか、見かけませんでした。


嬉しい事に我が社と、ライバル会社ですが」と、答えると、


近藤は運転しながら、「主流は日本では、うちとライバル会社しか、


売れ筋が無いのが現状だからな」と、語った。


するといきなり利奈は、脳裏にフラッシュバックが走った。


やはり白黒で、浴衣を着た自分が、ビールを飲んでいる姿だった。


隣では見知らぬ男性が、利奈に団扇を仰いで花火を見ていた。


言葉を無くす利奈を見た近藤は、「また来た様だね」と、呟いた。


利奈、「安定剤お昼ご飯と一緒に、飲んだのに」と、落ち込んだ。


近藤は運転しながら、「しかしどう言う訳で、


見知らぬ男性との記憶が、蘇るのだろう」と、考え込むと、


利奈は少し怒り気味に、「それは私が聞きたいです」と、イライラしてる様子で、


先程記載したノートで、自分の膝を叩いた。


そして車は信号待ちになり近藤は、考えていたが、


適切な答えが見出せなかった。


そして近藤は利奈に問い掛けた。


「どうして顔が、見えないのだろうか」と、不思議に思っていた。


利奈は俯き、「呪われているのかな、誰かに」と、恐れた。


すると近藤は、「呪われているなら、


楽しそうなフラッシュバックは、起きないだろう」と、語ると、


利奈は、「顔も見えないし音も無い、増してや行った事が無い場所で、


見知らぬ男性とエッチをしている、フラッシュバックでも、


心が病む事は無いの、どちらかと言えば心が、


弾む様な気持ちになるの」と、悩んだ。


近藤は車を走らせながら、「そうか、そんな自分が怖く成るんだね」と、語ると、


利奈、「はい、凄く不安になります。


見知らぬ記憶が、何故脳裏に呼び起こして来てしまうのかが」と、やはり悩んだ。


近藤は利奈の思いを汲んで、真剣に考えて上げていたが、


どうしても腑に落ちなかった。


近藤、「それはやはり、祭りかい」と、問うと、


利奈は、「そうです。


昨日も花火大会で、光秀と花火を見ていたら、


突然同じフラッシュバックが起きました」と、明確に伝えると、


近藤は唸り始め、「んー、普通は嫌な記憶が蘇る事は多いけど、


見知らぬ土地で、見知らぬ男性との、性行為のフラッシュバックね、


さっぱり解らない」と、理解に苦しんだ。


更新日:2016-12-26 16:06:09

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