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蝶々とうさぎ

「お前は蝶々みたいだねぇ。ひらひらどこかに飛んでいってしまいそうな気がするよ。でもうさぎのように独りぼっちになったら死んでしまいそうだ」
 平和の形をした陽だまりの縁側で、おじいちゃんは度々どこか遠くを見ながら私にそう言った。
 〈蝶々〉というあだ名の由来でもあるその言葉。小さい頃は気にしていなかった。最初にそう言われた時から十年以上すぎて、ひらひら飛んで行った先で、同じように遠い異国から海を越えてやって来た人たちに同じようなことを言われて初めてその意味を考えた。
 蝶々のようにうさぎのようにとは矛盾していないか? 独りぼっちが嫌ならなぜ一緒にいてくれる花から離れていくのだろう。なぜそこに留まらないのだろう。蜜がなくなってしまえばその花に価値などなくなってしまうのだろうか。
 幸せで穏やかな箱庭から飛び出したばかりの私には、まだおじいちゃんの言葉の意味は掴めていない。

更新日:2017-07-06 16:08:44

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