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●楽園からの手紙

「……カイン……?」
 虫の知らせのように、エデンのページが一枚、また一枚と風に捲れていく。エデンは意思を持ち始めていた。まるで、今から物語が綴られていくように、歴史が塗り替えられていくように。
「俺は……こんな物語にする筈じゃ……」
 否。既に、塗り替えられていた。見たこともない文章が付け加えられている。
「『幸は僕を生かしも殺しも出来る』……」
 カインではない。彼は、優希だ。この物語の中に優希は生きている。
「『傍にいることが出来るのなら、幻でもいいから幸に会いたい』……」
 会いたいのはこっちの方だ。そうでなければこんな物語は作らなかった――。

更新日:2012-01-05 02:28:23

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