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幕間 -とある少女と先生のお話2-

 話に一区切りついたところで、先生はまた来るからと帰っていった。
 結局なんだったのか。
 少女は先生が何を考え、何をしようとしていたのか考えようとしたが、答えが浮かぶことはなかった。
 先生はただ話をしていただけだ。それを少女は黙って聞いていた。


 先生が、人から聞いた話だと前置いて話し出したのは、なんでもないただの大学生の男の人と、同じバイト先に努める女の人の話だった。
 漫画や小説なんかにありがちなお話。女の人は家庭に問題を抱えていて、それを主人公の男の人が解決して、二人は結ばれてハッピーエンド。そんな話なのだろうと思っていた。
 だけど――


 最後に出てきたもう一人の女の人。ドキリとした。
 家に閉じこもり、世界を隔離して、見えない陰に怯えて暮らすその姿は、今の自分そのもので。


 少女は膝を抱える腕に力を込めた。
 先生が何を言いたかったのかはいまだに分からない。
 でも続きを聞いてみたい。そんな気になっていた。


 時計を見る。
 次、先生はいつ来るのだろうか。

 明日? それとも明後日?

 少女は目を閉じて、聞かされたお話を反芻しながら、明けない夜を過ごした。


 それから次、先生が訪れてきたのは二日後だった。
 隔たれたドア越しに聞こえてくる先生の声は、変わらぬ穏やかさに満ちていて。

 そして先生は今日も語り始める。
 その声に少女は静かに耳を澄ませた。

更新日:2012-01-19 12:03:12

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